乾いた大地を恵みの水で潤し、緑の農地に変えたのは…

西日本新聞 オピニオン面

 乾いた大地を恵みの水で潤し、緑の農地に変えたのは、九州で育まれた知恵だった。アフガニスタンで、かんがい事業に取り組む中村哲医師に教わった

▼中村さんは、戦乱と干ばつで土地も人心も荒れ果てた国で、1600本の井戸を掘り、長大な用水路を築いた。用水路の取水口に導入したのは、江戸時代に筑後川に築かれた山田堰(ぜき)の工法だ。「郷土の先人の技術を生かすことができ、誇りに思う」と話していた

▼非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(事務局・福岡市)の仲間とともに、1991年から同国で人道活動を続けてきた中村さん。本紙にも時々、現地の様子を寄稿してくれた。最新の報告は今月2日付。本紙ホームページでぜひ見てほしい

▼アフガン政府からも顧みられない貧しく、治安の悪い村で進めたかんがい事業。記事に添えられた写真は、政府関係者さえ恐れて近寄らないという村の指導者たちが、はち切れんばかりの笑顔で、穏やかにほほ笑む中村さんを囲んでいる

▼この地で中村さんがどんな存在だったかを伝えてくれる写真を見ていると、突然の悲報がとても現実だとは思えない。きのう、中村さんらが乗った車が銃撃され、中村さんや運転手らが亡くなった

▼これまでも多くの命を救い、これからも救うはずだった。残念でならない。せめてこの言葉を贈りたい。「あなたを郷土の先輩に持つことができ、心から誇りに思う」

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