聞き書き「一歩も退かんど」(36) 勾留395日の人質司法 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 「おりの中ってどんな感じ?」と聞かれることがたまにあります。そのたびに修行の足りない私はつい、「自分が入ってみれば」と声を荒らげそうになります。長期間、外に出られない苦痛は体験した者でないと分かりません。

 志布志事件で、起訴を免れた私の勾留日数は21日でした。その間、朝から晩まで刑事と検察官に「やったんだろう」と責め立てられ、「ここにサインしたら早く出られるぞ」とささやかれます。多くの冤罪(えんざい)事件で、容疑者がやってもいない罪を認めてしまうのは、そういう事情です。

 ちょっとややこしいのですが、説明しますね。日本では、警察官は容疑者を逮捕したら、48時間以内に送検(検察官に身柄を送る)しないといけません。検察官はさらに調べる場合、24時間以内に裁判所へ勾留請求します。請求期間は10日間で、さらに10日間の延長が可能。なので、逮捕から起訴(または釈放)までの勾留日数は、2+1+10+10の、最大で23日です。

 本来ならここで捜査終了となるはずですが、再逮捕や再々逮捕して、似たような容疑で取り調べることも警察はできます。さらには、起訴された被告には保釈請求の権利があるのですが、日本の裁判所は否認事案ではなかなか保釈を認めません。証拠隠滅や逃亡の恐れがあるというのです。

 そうやって勾留日数を延ばして捜査側に都合の良い供述を得ようとする手法を何というか、ご存じですよね。そう「人質司法」です。前日産会長のカルロス・ゴーン被告を巡る事件では、日本の人質司法が国際問題になりました。ゴーン被告の最初の勾留は108日に及んだそうです。

 ところが、志布志事件の勾留日数はゴーン被告も驚くほどの長さでした。罰金刑で済む程度の選挙違反なのに…。人権を無視しているとは思いませんか。被告12人(在宅起訴の1人を除く)全員の勾留日数を紙面に刻んでおきます。

 懐俊裕さん88日▽山下邦雄さん102日▽藤元いち子さん115日▽懐智津子さん、藤山成美さん、谷田則雄さん143日▽藤元安義さん181日▽藤山忠(すなお)さん、山中鶴雄さん、永山トメ子さん186日▽中山シゲ子さん273日。

 皆さん、自分がそんな長い間、おりに閉じ込められたらどうなるか、想像してみてください。そんな苦しみに395日も耐えたのが、妻のいとこで鹿児島県議の中山信一でした。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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