田川市の1歳男児死亡 行政の対応、専門家が指摘

西日本新聞 筑豊版 座親 伸吾

 田川市で昨年12月、当時1歳の男児が肺炎で死亡し、父親の常慶(じょうけい)雅則容疑者(24)と母親の藍容疑者(24)が保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕された事件。亡くなった三男唯雅(ゆいが)ちゃんの体からは、エアガンから発射されたプラスチック製BB弾の痕とみられるあざや、複数の骨折痕も確認されている。市や田川児童相談所(児相)は、一家を巡り断片的なリスク情報を把握していたが、虐待と確認できなかったという。一家への対応は適切だったのか。専門家に聞いた。

 市や田川児相などの関連機関でつくる「市要保護児童対策地域協議会」(要対協)は2017年5月、一家を支援が必要な家庭と決め、経過観察を始めた。唯雅ちゃんが生まれる2カ月前で、(1)母親が若くして出産が続く(2)前年に次男が乳幼児突然死症候群で死亡-などが理由だった。18年5月には、夫婦が子どもを自宅に残し1時間以上不在にしたことなどから、注意レベルを2番目に高い「要早期介入」に引き上げた。市は「来訪頻度を増やし、養育上のサポートなど見守り強化にも努めた」とする。

 ただ、元児相職員で福岡市子ども家庭支援センター長の河浦龍生氏は、「厚生労働省が都道府県などに出した児童虐待の通知によると、『乳幼児の長時間放置』はネグレクト(育児放棄)で、生命に危険が及ぶ高いリスクに該当する」と指摘する。

 河浦氏は、16年の次男の死亡原因や唯雅ちゃんの健診未受診も「ネグレクトを疑う事実だ」と言及。一家を支援対象とした17年5月の段階から「個人的には、家庭訪問でも子ども全員を直接確認すべきだったと考える」とし「重大な虐待リスクが的確に分析評価されず、過小評価されてみえる」と話す。

   ◇    ◇

 田川市による一家への接触は昨年10月、職員が長女の「乳児家庭訪問」で自宅を訪れたのが最後で、長男と唯雅ちゃんは不在だった。訪問が止まった理由について、市子育て支援課は「母親に会え、長女の4カ月健診を説明できたため」と説明する。

 しかし、唯雅ちゃんの司法解剖では、遺体から昨年9月上旬ごろに負ったとみられる複数の骨折痕が確認された。行政側が接触や状態把握を続けていれば、異変に気付いた可能性はある。

 県立大人間社会学部の奥村賢一准教授(社会福祉学)は、唯雅ちゃんが亡くなるまでの2カ月間、接触がなかったことについて「(田川市の判断を)児相に連絡して合意形成を図るなど、リスク管理や支援プランがしっかり共有できていたか。要対協を活用して医療や保健、福祉の専門機関と連携できていなかった可能性もあり、検証が必要」と指摘する。

 児童虐待に関する相談件数は右肩上がりで、現場では対応する職員不足などが深刻だ。奥村准教授は「児童福祉先進地のカナダ・オンタリオ州では、非営利組織が国や州の予算を受けて児相の役割を担う。高い専門性を持つ職員が24時間365日対応し、ケースワーカー児童福祉司)1人が受け持つ件数も少なく、密接に関わる」との事例を挙げ、「日本での虐待対応は全て行政。欧米のように民間の力も入れるなど、抜本的な変革が必要だ」としている。 (座親伸吾)

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