貿易協定発効へ 日米互恵に近づく努力を

西日本新聞 オピニオン面

 日米貿易協定が国会で承認され、来年1月1日に発効する見通しとなった。

 貿易立国の日本にとって、最大の経済大国である米国との貿易拡大は本来望ましいことだ。ただ、今回の協定は手放しで喜べる内容ではない。日本の農産品市場開放で米国が得るものに比べ、日本の得るものは明らかに見劣りするからだ。

 何より日本の最大の関心事である、自動車や関連部品に対する米国の関税撤廃について、結論が先送りとなっている。このままなら、90%以上の関税撤廃率が求められるとされる世界貿易機関(WTO)の2国間貿易協定のルールにも反する。

 自動車産業は国内経済への影響も大きい。日本の米国向け輸出の3割を占めており、九州から米国への輸出額では自動車と関連部品が半分以上だ。

 協定発効後、日米両政府は物品貿易から対象を拡大した「第2弾」交渉の予備協議を行う。日本政府には、自動車関連の関税撤廃の時期を明確にさせ、本来の互恵の協定に近づける努力を求めたい。

 トランプ米大統領は自国の貿易赤字を問題視し、国内産業保護のため、日本からの自動車に追加関税や数量規制を課す構えを見せていた。こうした懸念を協定に合意することで払(ふっ)拭(しょく)したと日本政府は説明するが、トランプ氏が再び交渉材料にしない保証があるわけではない。

 日本の国内総生産(GDP)を0・8%押し上げ、28万人の雇用を創出するという協定の経済効果の試算も疑問だ。自動車関連の関税撤廃を前提にしているからだ。自動車を除く試算を野党は求めたが、政府は「撤廃が前提」と応じなかった。

 今回の協定が発効すれば、貿易は拡大し、企業、農家、消費者に幅広く影響が及ぶ。重要な政策課題だったが、国会での政府の説明や対応はとても十分とは言えず、議論や理解が深まらなかったのは極めて残念だ。

 米国は、多くの農産品分野で環太平洋連携協定(TPP)並みの関税削減を勝ち取った。牛肉の関税は現行38・5%が26・6%に下がり、最終的には9%になる。安い牛肉は消費者に歓迎される一方、肉用牛の出荷が盛んな南九州の生産農家への影響は小さくないだろう。

 それでも輸出枠が拡大し、米国でも人気のある高級牛肉を輸出しやすくなるのは朗報だ。協定の発効を「攻め」の農業に転じる契機にもしてほしい。

 世界経済は今、自国第一主義のトランプ政権に振り回されている。将来的には米国のTPPへの復帰が望ましい。「自由貿易の旗手」(安倍晋三首相)として、その戦略を描くべきだ。

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