温泉、農家…ポスターで勝手に応援 鹿児島のデザイナー“押し掛け”

西日本新聞 河野 大介

「地域活性化の起爆剤に」

 ドライヤーを片手に「かわいくしてやろうか?」と迫る美容室の店主。「湯あたりと長話にはご用心」とはいえ、気持ちよさげに温泉に漬かるおじいちゃんたち…。

 鹿児島県内の地域を盛り上げようと、個性的で機知に富んだポスターを「勝手ながらも」と、無償で制作するデザイナー集団がいる。「1枚のポスターで誰かを勇気づけることができる。求める声のない場所にこそ、デザインの力で貢献したい」。そんな思いが、頼まれてもいないのに押し掛ける原動力。作品は地域の人たちにも喜ばれている。

 デザイナー集団は「OSHIKAKEデザインかごしま」(通称ODK)。同県姶良市のデザイナー浜地克徳さん(54)が、大阪の商店街を舞台にした同様の活動に触発され、2012年に結成した。活動は「押し掛ける」ことにこだわる。13年から12~28人が、県内の商店街店舗や温泉地のポスター、甑島の漁師の大漁旗などを制作してきた。

 応援したいというメンバーの「自発的な気持ち」が原則。オファーがあると逆に行動できなくなるという。応援する店舗などの対象が決まれば、あみだくじでデザイナーとマッチング。デザイナーは2、3カ月ほどの間に、現地に赴いて取材し、構想を練り上げてポスターを仕上げる。

 「お金にはならない。大変だが、制約もなく自由にできる楽しさがある」と浜地さんは強調する。「共感を呼ぶ作品ほどメッセージ性に加え遊び心がある。メンバー同士の研さんの場にもなっている」という。仕事の上ではライバルだが活動を通じて仲間意識も芽生え、それぞれの得意分野を生かした協業の動きも出てきたという。

   ◆    ◆   

 11月23日、離島を含む有機農業に光を当てたポスター16作品を、鹿児島市内でお披露目した。ODKとして3年ぶり5回目の制作展示。きっかけは、浜地さんが出会ったおいしい米を作る熊本県の農家の言葉だった。環境に優しく田んぼに生き物があふれ、除草いらずで手間もかからない技術を完成させたが、地元でもあまり注目されていないという。「技術を伝える後継者もいない。誰からも評価されることもなく、寂しい」。この一言が3年ぶりにデザイナー魂を奮い立たせた。

 どれも有機農家の思いを表現した作品ばかり。しかし、発表まで農家も完成形を知らない。「相手の要望は聞いても、反映される保証はありません」と浜地さん。「デザインの力を活性化の起爆剤にしたい。次はいつどこになるか分からないが、メンバーの心から湧き上がるものがあれば」。再び押し掛けて応援するつもりだ。(河野大介)

鹿児島県の天気予報

PR

鹿児島 アクセスランキング

PR

注目のテーマ