精神障害者に寄り添う NPOエスペランサの山口理事長

西日本新聞 長崎・佐世保版 徳増 瑛子

「不安なく暮らせる社会を」

 精神障害者を対象にしたグループホームを長崎市で運営するNPO法人エスペランサの山口弘美理事長(72)は、その道の先駆者だ。精神障害者の退院後の受け皿が不足していた28年前、県内で初めて専用のホームを手掛けた。自身が統合失調症を発症し、苦しんだ体験が後押しした。社会の理解は不十分と感じるが、「誰もが同じように生活できる社会になってほしい」と願う。

 同市出身。東京の大学を卒業後、24歳で大阪の大手鉄鋼メーカーに就職するも、26歳で発症。会社を解雇され、妻とも離婚した。仕事のストレスが原因だった。「どん底だった」

 パチンコ店やカラオケ店の店員、生命保険のセールスマン…。入退院を繰り返しながら、仕事を転々とした。なぜ人間関係がうまくいかないのか、仕事がうまくいかないのか、自問自答の日々が続いた。

 回復の兆しが訪れたのは、「病気を受け入れてから」だ。正しく理解し、薬を飲み続けると、症状は次第に治まった。きちんと付き合える病気であることを、患者である自分も理解していなかったと感じた。

 行政書士の資格を取得。仕事が軌道に乗り、県行政書士会長崎支部長も務めるようになったとき、ふと思う。「自分と同じ状況の人はたくさんいる。自分の幸せばかり考えていいのだろうか…」

 親から受け継いだアパートをホームとして運営することを決心。再婚した妻の幸子さん(71)と二人三脚で入所者に食事を提供、相談に応じるなどし、不安なく社会で暮らせるよう心掛けた。

 1995年には精神障害者の自立と社会参加の促進をうたう精神保健福祉法が施行され、社会のサポートも充実。現在、精神や身体、知的障害者を受け入れるホームを運営する県内の事業者は174を数える。ただ、受け入れ態勢はまだまだ不十分なため、症状が改善しても「入院」を続けざるを得ない人は多い。

 同市扇町にあるホームでは、月3万3千~4万円(光熱費込み)で、服薬や金銭の管理、食事の提供など生活支援を行う。「これからも入所者に寄り添い、生活を支え続ける」 (徳増瑛子)

長崎県の天気予報

PR

長崎 アクセスランキング

PR

注目のテーマ