「コグニサイズ」って何? 認知症予防に軽い運動と頭の体操

西日本新聞 筑豊版 丸田 みずほ

課題は男性の参加

 認知症予防や軽度認知障害(MCI)に効果があるとされているトレーニング「コグニサイズ」。約2年前、九州でいち早く始めた社会福祉法人「幸友会ひより」(飯塚市上三緒)では、認知症リスクの軽減など徐々に効果が表れ始めている。国内だけでなく海外でも注目され、タイでも取り組みが広がっている。気軽に楽しめる認知症予防について探った。

 「さかな」「しずか」「すずめ」「せいと」

 11月下旬、同会の施設の一室に70~90代の約20人が集まり、円になって腕を振りながら、あ~わ行のそれぞれの頭文字で作る3文字の言葉を発声していた。考え込んで腕の動きが止まりがちな参加者に、同会のコグニサイズ指導者、神宮弓紀さん(45)は、すかさず「腕を止めないで」と呼び掛けた。ある女性が「そらまめ」と大声で間違うと、周囲は笑いに包まれた。

 約1時間後、同市の高峰睦子さん(74)は「じんわり汗をかいた。考える機会が減った今だからこそ、脳が活性化している感じがする」と話す。

 同会が昨年、参加者9人を調べると、認知症発症リスクに関係するとされている歩行速度が13%、注意機能が12・6%向上していることが分かった。コグニサイズだけでなく、休憩時にテーブルを囲んでお茶やお菓子を手に談笑するのが楽しみで、継続できている人も多いという。

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 コグニサイズは2017年、県とバンコク、JICAの共同事業「タイ・バンコク都における介護予防推進プロジェクト」の一環で、バンコクの2カ所の保健センターがモデル地区となり展開された。

 県によると、タイの平均寿命は男性が70・8歳、女性が78・4歳(15年時点)。介護保険制度などの整備が追いついていないタイにとって予防の体制づくりは不可欠として、県に支援要請があったという。モデル地区がきっかけで他の保健センターにも取り組みが広がっている。

 神宮さんは17年から指導員として現地に派遣され、今年6月、60カ所以上の保健センターの医療従事者を対象にコグニサイズを指導した。「高齢者が楽しみながら運動でき、人とのつながりが持てる場所は、日本以外でもニーズがあるのだと感じた。海外にも広められたのは意義深い」と神宮さん。

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 コグニサイズの普及に取り組む国立長寿医療研究センターによると、協力施設は国内54施設、指導者は270人で、九州では48人(11月28日時点)。同センターは15年から年に2回、指導者養成研修(定員30人)を開いているが、定員を大幅に超える申し込みがあり、現在は抽せん制になるほど注目が高まっている。

 各地の参加者からは「介護施設や認知症に対する抵抗感がなくなった」との声もある一方で、ほとんどは女性で、男性の参加は少ないという。

 神宮さんは「高齢者が生き生きと過ごすことができ、長い目で見れば介護保険の財政負担軽減にもつながる。男性にも『わがこと』として捉えてもらえるように手だてを考えなければいけない」とした上で、「他の海外でも取り組んでもらえるよう、理解を広げていきたい」と話している。(丸田みずほ)

【コグニサイズ】英語のcognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせた造語で、国立長寿医療研究センター(愛知県)が開発した。軽く息が上がるくらいの運動と、少し考える程度の計算やしりとりで、体と頭の体操に取り組む。飯塚市の社会福祉法人「幸友会ひより」は、同センターから全国で2番目に「コグニサイズ促進協力施設」として登録された。

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