教科横断学習 「何のために学ぶか」を共有

西日本新聞 くらし面 前田 英男

福岡教育大付属小倉中の取り組み

 先行する特別の教科・道徳に加えて小学校での英語教科にプログラミング教育の導入など来年度以降、学校の授業風景が変わる。次期学習指導要領が目指すのは、従来の「何を学ぶか」とともに「どう学んで何ができるようになるか」の視点。実現には学校全体で指導を共有する「カリキュラム・マネジメント」が鍵になる。教科を超えて一つの課題に取り組む福岡教育大付属小倉中(北九州市)の実践をのぞいた。

 11月、小倉中のパソコン教室であった3年生の国語の授業。「具体的な事実を元に、どうすれば自分の主張を相手に納得してもらえるか考えながら書こう」。担当する篠崎琢郎教諭(32)がそう呼び掛けると生徒たちは一様にうなずき、自分なりの表現法を探った。

 テーマは「北九州市の持続可能性」を市民にアピールする提案企画。生徒たちは資料作成ソフトなどを使いながら環境、公害、持続可能な開発目標(SDGs)といったキーワードをパソコンに次々と打ち込んでいく。社会科の教科書を持ち込む生徒もいた。

 同じ日の3年生の道徳。「郷土愛」に触れた授業で、教師は教科書の題材を扱いつつ地元に引きつける。地域で誇れるもの、大切にしたいものなどを個人で、あるいはグループで話し合わせて発表させる。生徒の一人は「公害を克服した経験を世界に発信し、地域の未来につなげていく取り組みが北九州市民としての私たちの誇りで役割です」と感想を述べた。

 二つの教科に限らず、社会科の地方自治や理科の自然環境、英語のコミュニケーションと、全ての学びの方向は提案企画作りでつながる。3年生3クラスが、10月から11月にかけて取り組んだ教科横断学習だ。

知識活用へ多様な視点

 各教科は年間や学期で教える内容が決まっており、教師によって指導法や進度もさまざまだ。一方で、英語や国語などの教科指導は「受験学力」に重きを置きがちで、知識の活用までは至らないという問題も指摘されている。

 「何のために学ぶのか、子どもたちにあらためて考えさせる機会をつくりたいと思った」。研究部長の柴田康弘教諭(42)は教科横断学習の狙いをそう語る。

 テーマ設定では生徒がより身近に感じる地域課題を取り上げ、北九州市にも説明を依頼するなど協力を要請。優秀な企画は市民の目に触れる市立図書館への展示の約束も取り付けた。

 それでも授業を展開するに当たって、どの教科でどういった内容に触れるか。また、学習の進み具合や内容をどうすり合わせていくか当初の苦労は多く、3年生担当の教師6人は連日のように議論を重ねた。

 その中で、ヒントも見えた。空いた時間の互いの授業参観、授業の入れ替わり時の板書確認や打ち合わせ。日常的な意見交換に無料通信アプリLINE(ライン)も活用した。

 「一般的に学校では教師間で教科を超えて議論する機会は少ない。方向性を同じくすることで、各教科の理解が深まったのは大きな成果」と柴田教諭は言う。

教諭たちも議論重ねて

 横断授業の間、どの教科でも登場する「SDGs」。多少は嫌気が差す生徒もいそうだが、3年の工藤杏紀さん(15)は「それぞれの視点で見ることができるので飽きない」。北野日和子さん(15)は、文化祭で取り組んだ演劇を例に「いろんな教科の内容や生徒の意見を組み合わせながら企画書を作り上げる楽しさがあった」と語った。

 街角にあるSDGsのアイコンを写真撮影したり、家庭で話題にしたりと、生徒たちは日常生活でも意識するようになったという。

 こうした効果に教師たちも手応えを抱くが、時期を限った実施は可能でも通年では難しいと感じている。教師の働き方改革が叫ばれる中で学習デザインにかかる時間と労力をいかに軽減するかという課題もある。

 柴田教諭は「負担はあるが、教科を超えた協働により授業のアイデアが広がるほか、重複内容の削減、生徒の多面的評価などメリットも多い」と強調した。変わる学びにどう対応するか、教師力も試されている。(編集委員・前田英男)

【カリキュラム・マネジメント】各学校が設定する教育目標を実現するため、子どもたちや地域の実態を踏まえて教育課程(カリキュラム)を編成、実施、評価して改善を図るサイクルを計画的、組織的に推進すること。2020年度から順次実施される小中学校、高校の次期学習指導要領では、従来の学年や教科別の枠組みを超えて学校全体で取り組む必要性を強調。教科横断的視点での組み立てや、授業増に対応する時間割の工夫、地域など外部資源の活用などを通して「学習効果の最大化」を求めている。

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