「闘い続ける」香港“雨傘の女神”の思い 100万人デモから半年

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

 香港で政府への抗議活動が本格化して9日で半年。11月の香港区議会(地方議会)選挙では民主派が圧勝したが、民主派団体幹部の周庭さん(23)は「これで終わりじゃない。香港人の自由と権利を守るため闘い続ける」と国際社会を巻き込み中国政府の圧力と対峙(たいじ)する構えだ。日本にも米国の香港人権・民主主義法のような強い措置を求める。

 「民主的な国なら選挙で未来を変えられる。でも中国は独裁国家で、香港の選挙にその力はない。引き続き街で闘うことが大事だ」。民主派が8割超の議席を獲得した区議選を振り返り、周さんは力を込めた。

 中学生だった2012年、「中国国民としての愛国心」を養う愛国教育導入に反対するデモに参加。14年には行政長官選挙の民主化を求めるデモ「雨傘運動」で学生団体幹部を務め「民主の女神」と呼ばれた。

 長く民主化運動に身を投じてきたからこそ従来の活動に限界も感じる。「平和なデモなら香港政府は要求を聞こうともしない。6月に逃亡犯条例改正案の撤回を求めて200万人が街に出たのに無視された」

 6月以降「勇武派」と呼ばれる若者が警察と衝突。交通妨害や中国寄りとみなした店の破壊を繰り返す。「日本では迷惑をかける行為という見方があるけど、実生活に影響がない社会運動には力がない。政府にプレッシャーをかけないと何も変わらない」

 日本語が堪能な周さんは日本の報道も目にするが、香港のデモが「過激」と報じられることに違和感を覚える。「広東語では激しく急進的という意味の『激進』を使う。過激では前に進む運動の意義が伝わらないでしょ」。大好きなアニメで学んだ日本語を駆使し、ツイッターで香港の今を発信する。「日本の報道は『香港で暴力的な衝突が起きた』で終わる。その背景と理由を日本人に伝えたい」

 日本の政治にも期待は大きい。「各党が香港情勢を懸念する声明を出してくれたのはありがたい。でも米国のような制裁を含む法律があればもっとパワフル。アジアの民主国家として中国の人権問題に強い行動を取ってほしい」と訴える。

   ◇    ◇

 香港中心部の幹線道路を占拠した「雨傘運動」は学生と民主派団体の路線対立もあり、失敗に終わった。その後は長く絶望と無力感にさいなまれたという。「占拠した道路に『We will be back(また戻ってくる)』と落書きしたけど、どうやったら戻れるのか分からなくて…」

 5年後の今、胸にあるのは「仲間割れしない」との思いだ。「平和的なデモも、急進的な行動も主張は矛盾しない。みんな経験を積み重ねて頑張っている」

 香港に高度な自治を認める「一国二制度」は47年まで続く約束だ。だが「今は1国1・1制度あるかな」。デモ参加者のマスク着用を禁じる覆面禁止法を香港の裁判所が違憲と判断した際も中国政府は非難した。司法の独立や言論の自由といった香港の価値観は揺らぐ。それでも「香港は私の家。ここに残り自分の家を守りたい」と前を向いた。 (香港で川原田健雄)

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