自分が重い病気と知ったとき、ホッとする気持ちもあったという…

西日本新聞 オピニオン面

 自分が重い病気と知ったとき、ホッとする気持ちもあったという。3年前の春のことだ。サッカーJリーグ・アルビレックス新潟の早川史哉選手

▼筑波大を卒業し、開幕スタメンでデビューした早川選手は、体が変だった。だるい。ひどい疲労感。自分のプレーができない試合が続き、情けなくなった。2カ月後に急性白血病と告げられた。体の異常は自分のせいではなかったんだ、と思うと、えたいの知れない不安は消えた。そういう意味での安堵(あんど)感

▼絶望感が待っていた。抗がん剤治療、骨髄移植手術、1年間の入院。病院内で知り合った少女に闘う力をもらった(今年10月出版された自著「そして歩き出す」徳間書店)

▼中学3年のその少女は小児の白血病で隣の無菌室にいた。早川選手のことをお母さんから聞き、輪ゴムで作った花の形のアクセサリーを届けてくれた。色はオレンジと青。アルビレックスのチームカラーだ。お礼を言いに行くと、恥ずかしそうに「頑張ってください」

▼今年10月5日、3年半ぶりに公式戦に復帰した早川選手は、「お帰り!」コールに迎えられる少し前、ロッカー室で輪ゴムのアクセサリーを手に取り「行ってくるよ」と声をかけた。メールで励まし合った少女は2年前に亡くなっている

▼今年のスポーツ界にはテレビ画面にくぎ付けになる大きなニュースがいくつかあった。切なさを抱いた小さなドラマを本で知った。

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