コミュニティーの可能性探ろう 岩永真一氏

西日本新聞 オピニオン面

◆学びの「場」

 福岡の未来を“学び”でつくろう。2019年、福岡テンジン大学が新たに掲げたビジョンである。10年に福岡市との共働事業で開校した市民大学は、まもなく参加者が延べ1万人になる。街全体がキャンパス、誰もが先生にも生徒にもなれる大学で、これまで約450コマの授業を企画してきた。大学という名前は付いているが、本物の大学でもなく教育機関でもない、実態はゆるやかなコミュニティーである。コミュニティーだから年齢による線引きはなく、高校生や社会人や高齢者が混じっていることが授業で見られる風景だ。

 教育の世界で先生というと、理論をもとに知識という情報伝達をする人のことだった。しかしながら、伝達という一方通行の学び方は学習効率が悪いことがわかっている。そこで近年、人工知能(AI)が教育に入ることで先生の役割が変わる現象が起きている。生徒一人一人の学習進捗(しんちょく)度に合わせ、最適な学習内容をAIが提示してくれることで学習効率が上がるそうだ。そのとき先生は、生徒同士の学び合いを促したりするファシリテーター(促進者)の役割になって場づくりを行うことでAIと共存できる。

 福岡テンジン大学の授業にも先生がいる。先生だけではなく、授業を企画するコーディネーターというファシリテーター役がいる。ここでは、先生は学習の材料としての話題提供者となり、ファシリテーターが対話による学び合いを促していく。この大学がゆるやかなコミュニティーだからこそ、毎回の授業を企画するコーディネーターも、テーマも、先生も、生徒も変化していく。変わっていくことで、人と人、人と街を「学び」を入り口に繋(つな)いでいくことができるようになる。

 今の世界は変化が激しく未来予測が難しいといわれる。教育の現場でも、ビジネスにおける人材育成においても、正解がわからない課題に対話型で学び合う学習スタイルが重要になってきた。そのような「場」をつくることができるファシリテーターが育つには、人が集まる「場」が必要で、コミュニティーにはこの「場」がある。福岡の未来に向けて、多様なファシリテーターが育つ街がどうやったら実現できるのか、コミュニティーの可能性を広げていきたいと思う。

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 岩永 真一(いわなが・しんいち)福岡テンジン大学学長 1981年生まれ、福岡市出身。数社の企業での非常勤社員や西南学院大、北九州大での非常勤講師など、産学官民をまたいだ仕事をする複業家。

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