あおり運転防止 「加害者」にならぬ努力も

西日本新聞 オピニオン面

 命の危険とも隣り合わせになる「あおり運転」がなかなか撲滅できない。警察庁は厳罰化の検討を進め、都道府県警は道交法違反(車間距離不保持)など現行法令による取り締まりを強化しているが、それだけでは足りないものがあるのだろう。

 例えば岡山県警はインターネット上に、悪質な運転を繰り返す車の映像などの情報提供を求める専用サイト「鬼退治ボックス」を開設した。摘発強化とともに抑止効果も期待でき、全国に広がる可能性がある。

 一つ留意すべきは、あおり運転をする危険性があるのは、特定の運転者に限らないことだ。スピードが出ている車道、とりわけ高速道では、前後左右の車間が接近するなどして、多くの人は緊張を強いられる。

 そんな状況下では、視界になかった車に突然追い越しをかけられただけで、接触しそうになったと感じることも少なくないだろう。相手に悪意があると受け取ってしまい、いら立ちにつながりかねない場面だ。

 運転中に怒りの感情を突然あらわにし、攻撃的な行動に出ることを心理学では「ロードレイジ(路上の激怒)」と呼び、欧米では以前から問題視されてきた。被害者にならないのはもちろん、加害者にもならない冷静さを保つことが日頃から求められると言えるだろう。

 日本自動車連盟(JAF)の全国アンケート(2016年)によると、回答した約6万5千人の55%が「あおられることがある」と答えた。一方、自分が思いやりを持ち、交通マナーを意識して運転しているという人は97%に上った。ただ残る3%だけがあおり運転をしているとは考えにくい。無意識の行動を含め誰もが加害者になり得ることを示唆するデータだ。

 逆に知らぬ間に、相手を怒らせる原因をつくっている運転者も多いのではないか。

 代表的な例は、方向指示器を出さずに車線変更や右左折をする車だ。JAFのアンケートでは、そうした車が多いと思う人は77%に上った。九州では福岡県80%、大分県81%と8割を超えている。基本的ルールを守ることは、意図せざる怒りを誘発しない予防策の一つだろう。

 あおり運転は一昨年、東名高速道上で無理やり停車させられた車の夫婦にトラックが追突し死亡した事故を契機に社会問題化した。加害者の動機のきっかけは、パーキングエリアで駐車方法を注意され、それに立腹したことだった。

 怒りを予防し制御する心理療法アンガーマネジメントでは、怒りのピークは6秒間だとされる。ハンドルを握る際の参考にして、危険運転を防ぎたい。

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