看護師が病室拠点に患者支援 福岡・飯塚病院が独自方式「セル看護」

西日本新聞 医療面

 患者へのきめ細やかな対応と看護師のやりがいにつなげようと、福岡県飯塚市の飯塚病院(1048床)が「セル看護」と名付けた独自の看護方式を取り入れている。看護師の業務拠点をスタッフステーションから病室に変え、受け持ち患者数を減らしたのが特徴。無駄な移動をなくすなど、病床のそばに長くいる工夫を重ねたことで、いち早く患者の変化に気付き、迅速な対応が可能になったという。

 産科病棟の4人部屋を訪ねると、看護師がパソコンカートの前で作業しながら妊婦に話し掛けていた。原則、看護師は担当病室でさまざまな業務をこなし、約8時間の勤務のうち5~6時間を病室で過ごす。初めての出産を待つ女性(26)は「おなかの張りなど自分では分からない変化がある。看護師さんが近くにいてくれると安心」と笑顔を浮かべた。

 同病院がセル看護提供方式(セル看護)を導入したのは2012年度。前看護部長の須藤久美子特任顧問によると、救急医療の拡充に看護師確保が追い付かず、「忙しすぎて思うような看護ができない」との不満が目立ったのがきっかけだった。

 まず業務拠点をスタッフステーションではなく、病室に移した。処置を終えると病室で電子カルテに記録。医師とも病室で打ち合わせる。検査機器などはパソコンカートに常備、タオルやシーツなども病室の棚に用意し、移動の無駄を省いた。「患者さんに『ありがとう』と言われるのが一番モチベーションが上がる」との声を受け、患者と接する時間を増やすことが狙いだった。

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 業務量の削減にも取り組んだ。複数の看護師で患者を受け持つ「チーム看護」では、日勤看護師1人が患者6~8人を担当していたが、1人当たりの受け持ち患者数を平均4人に減らした。チームを統括するリーダー、薬や備品の準備など周辺業務担当者といった直接患者を受け持たない役割を廃止し、師長を除く全員が患者を受け持つように見直した。

 師長はそれぞれの仕事の進み具合を確認し、病院各部署の態勢が充実している時間内に対応できるよう残務を割り振る。結果的に残業が減り、退勤時間は平均約30分早くなったという。須藤さんは「多少心配はあったが、受け持ち患者数を減らせたことで業務に余裕が生まれた」と語る。

 こうしたセル看護は、スタッフ一人一人の生産効率を上げる製造業の生産方式を手本に考案。現在、全31病棟で看護師1058人が実施している。

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 効果は患者にも及んでいる。同病院によると、看護師がベッドサイドにいる時間が長くなったことで、異変の早期発見と早期介入につながり、夜間に体調が急変するケースが減った。床ずれの発生率は導入前(11年)の1・1%が17年は0・5%に改善。転倒・転落件数も11年の684件から16年には441件まで減少したという。

 他の病院からは「患者のプライバシーは守られているか」との疑問が寄せられる。昨年実施した患者アンケートでは、8割以上が「(看護師がそばにいて)安心」と回答。現看護部長の森山由香副院長は「体がつらい時は、そばで気に掛けてもらえた方が安心するという患者は多い」と分析する。

 9月、同病院はセル看護の普及を目的に「セル看護推進研究会」を初開催。全国から看護師ら約140人が参加するなど関心は高く、一部の医療機関では導入も始まっているという。

 森山さんは「今も柔軟に見直しを重ね、質を上げている。医師など他職種がセル看護をどう受け止め、患者さんにはどんな点が喜ばれているのか、丁寧に声を聞きながら、より良い看護を実現したい」と話している。 (医療取材班)

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