昭和から平成へと元号が変わった1989年に92歳で亡くなった彼は…

西日本新聞 オピニオン面

 昭和から平成へと元号が変わった1989年に92歳で亡くなった彼は日中間の「井戸を掘った人」だ。岡崎嘉平太(かへいた)。72年の国交正常化に先立ち、日中間の民間貿易を主導した実業家

▼当時の周恩来首相と深い信頼関係を築き、田中角栄首相が訪中する環境を整えた。元全日空社長としても知られる

▼水を飲む時には井戸を掘った人のことを忘れてはならない|。中国で伝わるこの言葉になぞらえ、周は岡崎を「井戸を掘った人」とたたえたと言われる

▼平成から令和へと元号が変わった今年、非政府組織(NGO)ペシャワール会の現地代表、中村哲さん(73)がアフガニスタンで命を奪われた。こちらは文字通り、井戸を掘り続けてきた人である

▼戦乱と干ばつで荒廃したアフガンで、現地の人々とともに掘った井戸は1600本。用水路建設も進め、緑の大地を蘇(よみがえ)らせてきた。命の源は水であり、農業の再興にも欠かせない。そして非軍事分野での支援こそが日本の国際貢献の道であると語ってきた

▼首都カブールの空港でガニ大統領に送られた柩(ひつぎ)はきのう、福岡に着いた。九州在住のアフガンの人々も集まり、感謝と哀悼の涙に包まれた。中村さんの名は決して忘れない、と。きょうは国際人権デー。国連で世界人権宣言が採択された日だ。中村さんの非業の死は悔しくてならない。しかし、彼の遺志をいかに受け継いでいくか。私たちもまた問われている。

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