1999年夏、高校生が宗教団体を巡る陰謀に巻き込まれる青春ミステリー

西日本新聞

 1999年。その年号を提示されて「世界が滅亡する」というノストラダムスの予言を思い出さない人はいないだろう。

 本書はそんな「ノストラダムスの大予言」に沸く1999年を舞台に、好きな人を死なせてしまったという後悔に苛まれる女子高生・あさぎと、あさぎに協力するSF好きの同級生・八女の青春ミステリーだ。中学二年生の時に亡くなった基(もとき)の三回忌に、彼の日記を受け取ったあさぎは、基が“平行世界(パラレル・ワールド)”の可能性を探っていたことを知る。その行為をなぞるように、基が死なずに済んだ選択肢を見出そうとするあさぎと八女。しかし、基の影を追ううちに、やがて二人は友人や家族ともども、ノストラダムスの予言を信じる新興宗教団体「アンチ・アンゴルモア」を巡る陰謀に巻き込まれていく。

 筆者の持論として「優れたミステリには優れた探偵(ホームズ役)と助手(ワトソン役)がいる」というものがあるのだが、その意味で本書はまさに「この上なく優れたミステリ」ではなかろうか。冷静沈着で観察力があり、脅されても動じない八女と、運動神経が良く、猪突猛進型のあさぎ。基のノートをきっかけに広がっていく謎が、二人の行動によってするする小気味よいほどに解かれていく。

 同時に、青春小説らしい繊細さも魅力だ。基の過去を知り、アンチ・アンゴルモアの狂信者に追われる中で、あさぎは表面上問題なく付き合ってきた友人たちの真意や秘密を知る。知ってしまった以上、かつてのような関係はもう望めない。お互い理解し合っていたはずの友が、急に赤の他人のように思える。その寂しさ、切なさは、誰しもが大人になる上で経験するものだろう。

 あさぎを、そして読者を襲うのは「決して過去には戻れない」という鋭い痛みだ。なのに、「もしかしたら」を模索せずにはいられない。もしあの時、こうしていたら。ああしていたら。しかし、変えられないものだからこそ私たちはかつての失敗を、後悔を乗り越えて前に進んでいくのだろう。あさぎも、数多の選択肢を模索するうち、ひとつの答えにたどりつく。
 
 後悔にのまれ、再び間違いを犯すか。それとも受け入れ、横たわる未来を歩んでいくか。それこそが「分かれ道」なのかもしれない。

 

出版社:双葉社
書名:分かれ道ノストラダムス
著者名:深緑野分
定価(税込):788円
税別価格:730円
リンク先:https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52284-6.html?c=40198&o=&

西日本新聞 読書案内編集部

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