【動画あり】惜別と意志継承を誓う涙 福岡で中村哲医師の合同葬 各界から供花続々

西日本新聞 中原 興平 坂本 信博 金沢 皓介

 アフガニスタンで4日に凶弾に倒れた福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師中村哲さん(73)の告別式が11日午後、福岡市中央区の斎場で営まれた。戦乱や干ばつで荒廃したパキスタンやアフガンで、多くの市民とともに人道・復興支援の歩みを進めた中村さん。その死を悼んで泣きはらす人や、涙を拭って志の継承を誓う人など大勢の人々が訪れ、白い花を手向けた。家族と同会による合同葬で、喪主は長男健さん(36)、葬儀委員長を同会の村上優会長(70)が務めた。 

中村哲さんの葬儀後、囲み取材に応じるペシャワール会の福元満治広報担当理事

 祭壇には、数年前に現地で撮影された中村さんの遺影が白い菊の花に囲まれて飾られ、遺体を安置した棺にはアフガニスタンの国旗がかけられていた。中村さんとともに殉職した警備担当者や運転手らアフガン人の遺影も飾られた。会場の壁や入り口付近には、女優の黒柳徹子さんや歌手の加藤登紀子さん、俳優の故菅原文太さんの妻をはじめ、各界から届いた100基を超す供花が並んだ。同会は、参列者からの香典の全額をアフガン復興事業に充てるという。

 村上会長は追悼の辞で「先生は、苦難について私たちに語ることは少なく、いつも前を向いて淡々と歩まれました」と霊前に呼びかけ、「中村哲先生の意志を守り事業継続に全力を挙げます」と誓った。中村さんの長男、健さんは親族代表のあいさつで、「20歳のころはよく叱られました。父は『行動しか信じない』とよく言っていました。行動で示していきます」と述べた。

 式は午後1時に始まり、参列者が1分間の黙とうを捧げたあと、女優の吉永小百合さんのナレーションで中村さんの人となりを振り返る約10分間の映像を上映。バシール・モハバット駐日アフガン大使、九州大で同級生だった久保千春同大学長、福岡高や西南学院中の同級生、中村さんが洗礼を受けた際の牧師の藤井健児さん、親族の玉井史太郎さんの計6人が弔辞を述べた。会場では、参列者が涙をすする音がやまなかった。

 村上会長の追悼の辞や親族代表あいさつの後、1千人を超す参列者が白菊を献花。遺族の希望で、中村さんが自室でよく聞いていたモーツァルトの楽曲が流れる中、参列者は中村さんとの別れを惜しんだ。

 上皇さまと上皇后さま、秋篠宮ご夫妻からは弔意が寄せられた。玉城デニー沖縄県知事、日本医師会(日医)の横倉義武会長、鈴鹿光次・在アフガン特命全権大使からの弔電も読み上げられた。

 中村さんは1946年、福岡市生まれ。福岡高、九州大医学部卒。84年5月に現地で医療活動を開始し、アフガン、パキスタン両国に病院や診療所を開設。アフガンで2000年に大干ばつが発生してからは、水源確保のため井戸の掘削や復旧、農業用水のかんがい事業にも取り組んだ。

 03年に「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞。18年にはアフガン政府から勲章を授与され、今年10月には同政府から名誉市民権(市民証)を授与された。

 中村さんは今月4日、アフガン東部ナンガルハル州ジャララバードの宿舎から、かんがい作業の現場に車で向かう途中に襲撃された。

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