新たな経済対策 中身より規模でいいのか

西日本新聞 オピニオン面

 政府が新たな経済対策を閣議決定した。とりまとめの過程では、中身の議論より規模拡大を求める声が目立った。結果として、国の財政を傷める大盤振る舞いになったのではないか。そうした懸念が拭えない。

 「安心と成長の未来を拓(ひら)く総合経済対策」と銘打ち、2019年度補正から20年度当初へつなぐいわゆる「15カ月予算」で必要な措置を講じるという。

 国が低利で資金供給する財政投融資も積極的に活用する。国と地方の財政支出に民間投資を加えた事業規模は26兆円に上る。「1億総活躍社会の実現加速」を掲げた前回、16年の28兆1千億円に迫る大型対策だ。

 国費は前回を上回る7兆6千億円がつぎ込まれる。10月に消費税率を10%にアップした税収の増加分をはるかに上回る。建設国債の発行で財源を確保するとはいえ、財政規律の緩みは隠しようがない。

 今年、国内各地で相次いだ災害を踏まえ復旧・復興事業を対策の柱に据えたのは理解はできる。不透明感を増す世界経済の下振れリスクへの備えや、来年の東京五輪後を見据えた手当ても必要ではあるだろう。

 問題は、その中身だ。全体として、各省庁がこの際とばかりに打ち出した事業をホチキスで束ねたような印象が強い。

 インフラの整備も目につく。堤防の強化、調整池やダムの整備など防災関連に加え、成田空港第3滑走路建設を念頭に置いた首都圏空港の機能強化、関西空港を想定する国際空港へのアクセス強化などが並ぶ。事業規模を膨らませる狙いだろうが、大型の公共工事は費用対効果の検証が不可欠である。

 資金の使い方にも気掛かりな点がある。小規模事業者へのIT機器導入を支援し、次世代通信規格「5G」の先を見据えた技術の開発を国家プロジェクトとして推進すると明記してある。こうした複数年にまたがる事業の財源を継続的に確保すると確約していることだ。

 基金を使う手法もあるが、使途のチェックが甘くなりがちで要注意だ。第2次安倍政権の発足後、甘い計画に基づき官民ファンドが続々と設立され、多くで損失が膨らんでいる。同じ轍(てつ)を踏まない精査が必要だろう。

 経済対策にふさわしくない事業も目につく。五輪後の個人消費を下支えする名目で、マイナンバー(個人番号)カード保有者に限った消費活性化策がその典型だ。2万円の前払いに5千円分のポイントを付与し不人気なカードの普及を促すとは、ばらまき以外の何物でもない。

 安倍政権下で国の借金は増え続けている。「放漫財政」のつけは後世が背負うことになる。

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