食品ロス削減 成果を「見える化」に 甲斐諭・中村学園大学長に聞く

西日本新聞 くらし面

 わが国で、本来食べられるのに捨てられている食品の量は年間643万トンに達する。国連が飢餓に苦しむ世界の人々に届けた食料援助量の1・7倍にも上るという。資源の無駄遣いというだけでなく、人道的にも看過できない状況にどう立ち向かうのか。流通関連業者や学識者などの委員でつくる、福岡県食品ロス削減推進協議会の会長、甲斐諭・中村学園大学長に聞いた。(佐藤弘)

 -そもそもなぜ、食品ロスが問題なのか。

 食料が食卓で消費されるまでには、生産、加工、流通などさまざまな形でエネルギーを使う。食品ロスが出れば、それを廃棄するためのエネルギーや、地球温暖化を招く二酸化炭素(CO2)の排出、焼却灰の埋却など、ますます環境に負荷をかける。

 今はまさに「地球が泣いている」状態。その意味で、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」で、2030年までに、世界全体で小売・消費レベルにおける1人当たりの食料廃棄を半減する目標を打ち出したのは、時宜にかなう。

 -目標を達成できなければ、誰が困るのか。

 食品ロスには廃棄費用が伴うので、短期的には排出者が困る。だが、地球の資源は有限だから、このまま放置すれば、それは確実に人類に禍根を残す。

 食料は、不足して困っているところには行かず、お金があるところに行くのが現実。地球が疲弊し、食料生産に支障をきたしたら、世界の平和は保てなくなるし、食料の輸入大国である日本は生きていけない。

 -目標を実現するためには、何が必要か。

 国は2000年、カロリーベースで食料自給率45%という目標を掲げたが、現実には過去最低の37%まで落ち込んだ。食品ロス問題で同じ轍(てつ)を踏まないため、まず国が本気で具体的計画を示し、実行すること。そして、自治体や企業、市民などの理解が深まる不断の啓発活動が欠かせない。

 例えば、食品ロスを減らした市民が得をする仕組みを数多く提示したり、ロスを有効活用し、社会的責任を果たした自治体や企業などを表彰する制度をつくったり。成果を「見える化」し、いかに協力意欲をかき立てるかが鍵を握る。

 -企業などから廃棄前の食品を提供してもらい、必要な人たちに提供する「フードバンク」の動きも広がっているが。

 「余ったからあげる」にとどまらず、一歩進んで一緒に調理して食べましょうという取り組みになれば、さらにいい。調理能力が身に付けば、食材を無駄にすることも減るだろう。

 ただ、こうした組織は、ヒトもカネも不足した中での運営を強いられているケースが多く、市民や企業の応援が不可欠。うまくやれば、食品ロスをきっかけに、地域のパワーや善意を集める仕組みを通じ、皆で支え合う地域づくりに発展する可能性も秘めている。

 しかめっつらで取り組んでも長続きしないし、面白くない。明るく前向きに取り組める方策を産官学で考えたい。

        ◇       ◇

 農林水産省の推計では、わが国の食品に関わる廃棄物量は2759万トン(2016年度)に上る。

 これには、大豆の搾りかすや小麦ふすまといった飼料などに利用できる有価物、魚の骨や野菜くずなど不可食部も含まれ「食品廃棄物等」と呼ばれる。それ以外で、本来は食べられるのに捨てられているものが「食品ロス」となる。

 食品製造業や外食産業、食品卸売・小売業といった事業系と一般家庭で生じる食品ロスの総量は、同年の推計で643万トン。業界ごとの発生量は円グラフの通りで、家庭での多さがうかがえる。

 近年の推移は棒グラフの通り。事業系、家庭系とも2030年度に、2000年度の量から半減するのが、国の目標だ。(特別編集委員・長谷川彰)

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