「父は行動しか信じなかった」中村哲さんの生き方、刻む長男

西日本新聞 一面 中原 興平

 学んだことは、行動で示すー。中村哲医師の告別式で長男健さん(36)は時折声を震わせながらも、故人を思わせるとつとつとした口調であいさつした。危険な異郷で大勢の命が懸かった事業に取り組む日々の中でも、家族をいつも大切にしてくれた父。他人を思いやること、懸命に物事に臨むことの意味を背中で教えてくれた父。家族だけに見せた哲さんの素顔と残された教えが、参列者の心に刻まれた。

 「最初に申し上げたい」。報道陣に公開された文面や参列者によると、健さんはまず、哲さんと共に凶弾に倒れた運転手と護衛を追悼し「申し訳ない気持ちでいっぱい」と頭を下げた。さらに、両国民や政府、事件後にさまざまな配慮を受けた国や企業などへ感謝し「父が命がなくなってもなおアフガニスタンで活動ができるのも皆さまのおかげです」と述べた。

 昆虫や自然を愛した哲さん。活動の原点もパキスタンとアフガン国境の登山だった。家ではいつも庭の手入れに励み、幼い頃から健さんを連れて山に登っていた。「できればみんなで行こうよ」「みんなで行った方が楽しいよ」。遊びに行くときに、よく言っていた言葉だという。

 哲さんは多くの人命を救うため、一年の多くを危険なアフガンで過ごしてきた。旅立つときに2人きりの場面で掛けられる言葉は「お母さんをよろしく」「家を頼んだ」。余裕がないときも「いつも頭のどこかで家族のことを思ってくれる父でした」。

 「学んだことは、家族はもちろん、人の思いを大切にすること、物事において本当に必要なことを見極めること、そして必要なことは一生懸命行うということです」

 ペシャワール会の会長や駐日アフガン大使ら、故人ゆかりの人たちがおえつを漏らしながら弔辞を読んだ哲さんの告別式。声を詰まらせながらも落ち着いた表情であいさつを読み上げた健さんは、当初の予定になかった言葉で決意を示した。

 「父は『俺は行動しか信じない』と言っていました。父から学んだことは、行動で示したいと思います」 (中原興平)

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