「先生、ありがとう」参列者が涙 中村哲さん告別式に1500人

西日本新聞 社会面 坂本 信博 金沢 皓介

 「哲ちゃんさよなら」「先生、ありがとう」。福岡市で11日に営まれた非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表で医師の中村哲さん(73)の告別式。「人の幸せとは三度のご飯が食べられ、家族が一緒に穏やかに暮らせること」と説き、貧者に寄り添い、医療支援や用水路建設に奔走してきた「アフガンの英雄」に、参列者は涙に暮れながらその偉業をたたえ、最後の別れを惜しんだ。

 中村哲さんの告別式では、長く深い親交を重ねてきた人々が在りし日の姿を振り返り、涙とともに追悼の言葉を絞り出した。約1500人の参列者からはおえつが漏れ、やり場のない悲しみと喪失感が会場を包んだ。

 アフガニスタン国旗が掛けられたひつぎを囲むように白い菊で彩られた祭壇。家族が選んだ遺影は穏やかな笑顔を浮かべていた。

 同会の村上優会長(70)は「今の私には先生の死を受け入れる余裕はありません」と追悼の辞を涙ながらに切り出し、「先生の尊い犠牲は私たちに『前を向いて進め』と力を込めて後押しをしている」と声を振り絞った。会の今後については「“遺志”ではなく私たちの心の中に生きている先生の“意志”として事業継続に全力を挙げます」と改めて誓った。

 多くのアフガン人も参列する中、バシール・モハバット駐日アフガン大使は「先生を救えなかったことを本当に申し訳なく思い、悔しさと悲しみで胸がいっぱい」と痛恨の表情で弔辞を読み上げた。「アフガン人は皆全員泣いている。日本人であり、アフガン人でもある中村先生は私たちのヒーローです」と声を震わせた。

 中村さんが中学時代から通った教会の牧師、藤井健児さん(88)は「哲君の働きを引き継いでいくことが大きな力になる」と語った。藤井さんが賛美歌を歌い始めると、参列者の歌声が後に続いた。

 「主イエスのまきたまいし いとも小さき命のたね 芽生え育ちて地のはてまで その枝を張る樹とはなりぬ(主イエスがまいた小さな命の種が、やがて枝を張り、世界に広がり大きな木になった)」

 いとこの玉井史太郎さん(82)=北九州市若松区=は、中村さんの祖父で火野葦平の小説「花と龍」のモデルになった玉井金五郎を挙げ「『正しいものは最後には必ず勝つ』という正義感をそのままに、人間としての美しい気質を受け継いでいた」としのんだ。

 中村さんのアフガンでの数少ない娯楽はクラシック鑑賞だったといい、献花の際は生前好きだったモーツァルトの楽曲が流された。妻尚子さん(66)ら親族は一人一人に頭を下げ、気丈に振る舞っていた。

 会場の外では、中村さんの告別式と知り、立ち止まって黙とうする人や、合掌する人の姿も目立った。

 出棺を迎えた午後3時半ごろ。クラクションが出発を知らせると、参列者や沿道の市民から自然と拍手が湧き起こった。かけがえのない功績をたたえるように、車が見えなくなるまで拍手は鳴りやまなかった。 (金沢皓介、坂本信博)

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