所有者不明土地 官民の知恵で有効活用を

西日本新聞 オピニオン面

 持ち主の分からない土地が増えている。全国では、九州の面積より広い約410万ヘクタール(2016年時点)を上回ると推計される。しかも今後さらに増えていく見通しだ。

 親が亡くなっても「管理できない」といった理由で子や孫の世代が相続登記をせず、手を付けずにいることが主な要因だ。

 こうした「所有者不明土地」は、道路拡幅などまちづくりの妨げになるだけでなく、隣接地とのトラブルのもとにもなる。地域の空洞化につながり、災害対策の上でも大きな障害だ。

 官民で知恵を絞り、有効な活用策を探りたい。

 これまで政府はさまざまな方策を打ち出してはいるが、決め手を欠く状況だ。今月に入り、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が中間試案をまとめ、注目されている。相続登記の義務化や所有権放棄を認めるなど、従来より踏み込んだ内容を柱にしているからだ。

 現状では土地を相続しても、地価の下落などで希望や税負担に見合う価格で売却ができないケースは多い。そのまま登記されなければ、第三者には相続人不明の物件でしかない。法律上の相続人は年月の経過に伴い子孫の世代に広がる。その土地を自治体が活用しようとしても、相続人全員を捜し出して了解を得なければならない。

 中間試案が提起する問題意識は妥当と言えるのではないか。

 試案には、所在が分からない人の財産のうち土地だけを切り離し、自治体など第三者が管理できるようにする新たな制度の案も盛り込まれた。東日本大震災の復興事業が教訓になっている。高台などに移転先用地を取得しようとした際、現行制度では土地以外の全財産の管理まで迫られたという。

 近年続発する大規模災害の被災地の復興を考えると、土地に関する弾力的な制度が求められているのも現実だろう。

 登記上の所有者が特定できないと固定資産税を徴収できないといった問題もある。政府は所有者の代わりに、現に土地を使用している人に課税する制度改正も検討している。

 一連の改革や新制度の具体化に向けて、政府は各界の意見に広く耳を傾けてほしい。

 一方、少子高齢化に伴う空き家の増加も各地で深刻な弊害を生んでいる。景観を損ない、犯罪の温床となるだけではない。地震や豪雨の際には容易に倒壊し救急活動の妨げにもなる。

 空き家を巡ってはここ数年の法整備により、危険と判断した自治体が解体したり、高齢者向けの住宅として整備したりする仕組みが設けられた。時代に即した柔軟な発想は必要だ。

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