うどん店で流した涙 連載・霹靂の日々【5】大島一樹

西日本新聞

 初めの数日は私自身、記憶が混乱している部分が多いのですが、それでもたくさんの励ましをいただきました。中でも「頑張ってください」への違和感と「祈っています」に感じた温かさは今でもはっきりと。言葉って難しいものですね。

 オクサンが倒れた次の日の夕食は、救命救急センターの近くのうどん店に、子どもたちを連れて行きました。そこで初めてオクサンの状態について、私が聞いたことを伝えました。

 子どもたちは既に、たくさんの管につながれたオクサンとは対面していましたので、初めは固唾(かたず)をのむ感じ。伝えたのは、脳の3分の1以上がダメになっていること、自発呼吸が止まっていること、そして命は95パーセント以上、難しいと言われたこと。

 「お母さん、死ぬと?」「分からんけど、後悔せんようにせんばね」。

 長女(高3)と長男(中1)は、うつむいて涙を流しました。次女(小2)は大きく目を見開いたままイヤイヤをするように、声を殺すように泣きました。

 私は初め、涙をこぼさないよう上を向いていましたが、無駄な抵抗でした。そして、不安、悲しさ、寂しさに押しつぶされそうになりながら、現実を受け入れつつある自分に嫌悪感-。

 うどんの味は全く覚えていません。子どもたちもでしょう。ほかのお客さんや店員さんは驚かれたと思いますが、そんなことを気にする余裕はありませんでした。 (音楽プロデューサー、佐賀県みやき町)

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