たたかない子育てどうやって? 体罰禁止、来年4月に法施行

西日本新聞 新西 ましほ

 親による子どもへの体罰を禁じる改正児童虐待防止法などが来年4月に施行される。厚生労働省の有識者検討会は3日、体罰の定義や予防策から成る指針素案をまとめた。体罰は子どもの成長や発達に悪影響を与えると科学的にも明らかになっているが、日本ではしつけの一環として容認されてきた背景がある。子育てに暴力を使わない社会は、どうすれば実現できるのだろうか。

 素案は、子どもの身体に苦痛や不快感を引き起こす行為(罰)はどんなに軽くても体罰に当たるとし、改正法で禁じられると明記。具体例として「頬やお尻をたたく」「長時間の正座」「夕飯を与えない」などを挙げ、暴言も「子どもの心を傷つける行為」として発達に悪影響を与える可能性があると強調した。

 一方、しつけは子どもをサポートして社会性を育む行為とし、言葉や見本を示して子どもが理解できる方法で伝える必要があると指摘。接し方や叱らずに済む環境づくりなど、体罰に頼らないための工夫も具体例を挙げて示した。

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 日本では体罰を容認する意識は根強い。公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(SCJ)が2017年に2万人を対象に行った意識調査で、しつけのために体罰を容認する人は56・7%に上った。また、しつけの一環として子どもをたたいたことがある人は70・1%だった。

 改正法施行後も、監護や教育に必要な範囲で子どもを懲らしめることを親権者に認める民法の「懲戒権」は残る。2年をめどに在り方が検討される予定だが、懲戒権がある限り、しつけを口実にした虐待はなくならないとの指摘がある。

 一方、世界では58カ国が法律で体罰を禁止している。1979年、世界で初めて体罰禁止を法制化したスウェーデンでは、60年代に55%の親が体罰を肯定的に捉え、95%の親が体罰を行っていたが、2018年にはそれぞれ1%、2%に激減したという。

 同国では啓発のため、小冊子の全世帯配布、牛乳パックへの広告掲載、学校の授業での導入など大規模なキャンペーンを継続的に行っている。SCJ国内事業部の菊池美帆子さんは「日本でも法改正と同時に、啓発に力を入れて社会の意識を変え、体罰を使わず子育てできるように親を支援することが重要だ」と指摘する。

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 体罰は駄目と頭で分かっていても、言うことを聞かない子どもに思わず手を上げてしまうと悩む親は少なくない。

 東京都江東区で2人の子どもを育てている女性(38)もその一人だ。いくら口で言っても聞かないとき、気持ちに余裕がないといらいらが爆発し、お尻や手の甲をたたいてしまう。自身も子どもの頃、悪いことをしたらたたかれた。「たたく以外に、その場をどう収めたらいいか分からなかった」

 そんなとき、子どもの通う保育所で「はぴトレ講座」に参加した。家庭でよく起きる困った事例を親役、子役に分かれて演じ、声掛けの仕方を考えた。例えば、画面近くでテレビを見ているときに「近い」ではなく、「ここまで下がって見よう」と具体的に伝えて、できたら褒める、という内容だ。

 「声を荒らげそうになる前に、講座を思い出して声掛けができる日も増えた」と女性。怒りが爆発しそうなときはトイレにこもって深呼吸。「まだ理想通りとはいかないけど、少し子育てが楽になった」と話す。

 女性が受講したのは、たたかない、怒鳴らないしつけのこつを伝える「KOTOハッピー子育てトレーニング講座」の簡易版だ。区は16年から講座を開催しているが、7回の連続講座で受けられる人が限られていた。そこで昨年から区職員をトレーナーとして養成し、保育所や児童館で簡易版も開くようにしたという。

 加川彰こども家庭支援課長は「子どもとの向き合い方に悩む親はたくさんいる。誰もが気軽に講座に参加できるようにすることで、小さな悩みも相談できる機会をつくり、虐待など大きなトラブルになる前に防ぐことができるのではないか」と話している。 (新西ましほ)

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