豪雨の学校、子どもを帰さず守る選択肢 機転が保護者の命も救った

西日本新聞 くらし面

 新局面 災害の時代―後悔しない備え❷

 皆さんの住む地区の学校や保育園では、災害時に備え子どもの保護者への引き渡し訓練をしていますか。何分で全員を引き渡せるか保護者の側も把握されていますか。引き渡しの承諾書を事前に読んでいますか。

 読者の方から防災講演会で多くを学んだと感想を頂き、保護者教育の大切さを再認識しました。状況次第では、子どもを帰さずに守る選択肢もあります。

 2017年7月5日の九州豪雨の際、福岡県東峰村の村立小中一貫校「東峰学園」では、早めの判断で生徒や児童を帰しませんでした。結果として保護者もみな無事でした。

 その日午後1時すぎ、住民から学校に「川が増水している」と連絡があったそうです。村の防災無線が「大雨警報」を知らせる前。村の一部が停電し、保護者への連絡メールが通じません。東野正美校長(当時)は村教委と相談し「学校で待機」を決断します。

 普段の連絡網で連絡がつかない保護者には防災無線で。職員が生徒宅に行って知らせたほか、村外に出ていた教頭に「しばらく学校待機」のメール配信を依頼し、漏れがないよう徹底しました。機転を利かせた早めの行動で、保護者がわが子を迎えに行こうとして危険にさらされる事態も避けられたのです。

 こうした対応の下地には12年に体験した九州北部豪雨の記憶があったといいます。当時からいる職員から「5年前と雨の降り方が違う」と指摘も出て、低学年の児童の場合、保護者が迎えに来て、村内に何カ所かある橋を渡って自宅にたどり着くには時間がかかり過ぎると判断したわけです。

 この日は小中学生131人が、教職員31人、近隣住民13人と一緒に一晩を過ごしました。東野校長はその際、学校での待機期間について最悪の想定を当初の1泊2日から、2泊3日に延長して備えたとのこと。2日目は、保護者が迎えに来られなかった31人が泊まり、3日目の午後7時、保護者への引き渡しが無事に完了しました。

 学園の校舎が浸水の危険がない役場のそばにあったことで、非常食を分けてもらえたり、防災無線を保護者への連絡に使えたりと、災害時の利便性にもかなっていました。断水対策で教員が校庭にバケツを置いて水をためるなど自衛にも努めました。一貫校で小中学生の交流行事が多く、校内で待機中も日頃のように、上級生が下級生の面倒をみたそうです。学園のチームワークは、危機管理の基本とされる「さしすせそ」そのものでした。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント❶ 危機管理のさしすせそ=「さ」最悪の想定で「し」慎重に「す」素早く「せ」誠意をもって「そ」組織対応する。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

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