「いのちスケッチ」ロケ地巡りしてみた 大牟田の美と情緒を再発見

西日本新聞 筑後版 吉田 賢治

 大牟田市が舞台でロングラン公開中の映画「いのちスケッチ」(瀬木直貴監督)は、スクリーンに大きく映し出される市内の風景や市民なじみの店が見どころの一つだ。市はロケ地マップを作り、多くの人に巡ってもらう戦略を立てている。マップを頼りに、印象に残るシーンの撮影場所を訪ねてみた。

 まずは何と言っても大牟田市動物園。映画の主舞台で、多くの動物が登場した。セットで使った「延命動物園」の看板は今も入場門に掲げられている。

 注目したのは入場門脇のカプセルの販売機「ガチャポン」。1回200円で動物園のオリジナルバッジを入手できる。撮影時には出演者らの人気も集め、主役の亮太を演じる佐藤寛太さんやヒロインの藤本泉さんは「全10種コンプリート」を達成したとか。販売機そばには佐藤さんの写真パネルも。椎原春一園長によると、映画応援企画で映画チケットの半券を持参すると入園無料(来年1月13日まで)になるサービスの利用者は多く、ガチャポンも人気だ。

 亮太が、水着の金髪女性を大きく描いた壁の前を歩く映像も記憶に残る。市中心部・栄町の並木通り。壁画横の「ありあけ饅頭(まんじゅう)」の片江葉子さん(67)によると、10年ほど前にスプレーで描かれた。時を経てやや色あせ、情緒を漂わせる。撮影の際は佐藤さんが店にふらっと入ってきて、肉まんなどを買ったという。「びっくりしたけど、とても好青年でした」と片江さん。

 亮太が仕事帰りに立ち寄るラーメン店は本町の老舗「銀嶺」だ。夜のシーンを撮影したいと申し出を受けた店主の小松健太郎さん(46)が快諾。赤茶色のボックス席で亮太と親友の孝之がラーメンをすする場面は、飲んだ帰りに立ち寄る市民の日常そのものだ。

 小松さんによると、撮影時に佐藤さんは3杯も食べ、撮影後も何度か来店した。銀嶺も映画応援企画で、映画の半券を示すと1杯630円のラーメンを300円で提供する(来年1月末まで)。「せっかくの大牟田発の映画をきっかけに、人でにぎわう街にするための一助になりたい」。小松さんは破格のサービスに込めた思いを語る。

 堂面川沿いの桜や、遊漁船が係留される河口近くは「何げない風景が、映画で見ると素晴らしく見える」との市民の声も多い。巧みなカメラアングルに引き込まれる情景がちりばめられた映画の中でも、ひときわ息をのむ光景が熊本県荒尾市の荒尾干潟だ。重要な湿地を保全する「ラムサール条約」にも登録されている。小型無人機ドローンでも撮影された。

 映画と同じく日の入り頃に訪れると、空と干潟が徐々に朱色に染まっていき、まさに絶景だ。「日によって表情が違う。自慢の場所です」と近くのアマ写真家の西村誠さん(82)。夕焼けが美しい大牟田や荒尾の中で、瀬木監督が撮影場所に選んだのもうなずける。

 ロケ地巡りで忘れてならないのは大正町の「やきとり二番」。亮太の実家の設定だ。そもそも、亮太のモデルになった漫画家、故三隅健さんの母山下喜代子さん(68)が営んでいる。撮影後には出演者やスタッフとの食事会があり、山下さんは佐藤さんにハグしてもらったという。「父役の高杢禎彦さんも、母役の浅田美代子さんもとても気さくで、素晴らしい思い出がたくさんできました」

 店では、映画の半券を提示すると名物の焼き豚足を1本サービスする(来年3月末まで)。三隅さんが描いたキャラクターの少女イトと、謎の動物ムルチのスタンプを置いており、客は押すことができる。(吉田賢治)

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