「政治家の覚悟」どこへ 山口 卓

 「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然だ」。菅義偉官房長官が2012年に出版した著書「政治家の覚悟」に残した名言だ。菅氏を担当していた当時、繰り返し読んで共感していた。

 菅氏は著書で、東日本大震災への対応を話し合う会議の大半の議事録を残していなかった旧民主党政権を、憤りを込めて批判している。自身のブログでも「誤った政治主導」とのタイトルを付け、「議事録を作成しないのは法律違反であるとともに、国民への背信行為」「失敗を隠そうとしたと疑われるのは当然」とまで書いていた。

 その菅氏はどこに行ったのか-。

 公的行事の桜を見る会の問題である。「招待者名簿は廃棄した」と言い切り、バックアップデータは公文書に当たらないと強弁、「復元はできない」と繰り返した。

 会場に反社会的勢力とみられる人物が出席していたことは認めたが、どんな人物だったかは「個人情報」を盾に未解明のまま。ついには反社会的勢力の定義まで「一義的に定まっていない」と曖昧にしてしまった。

 雑談では、よく「俺は失言しない」と口にしていた。森友・加計(かけ)学園問題など政権の危機にあっても、1日2回の記者会見を乗り切り、一部で「鉄壁のガースー」とあだ名を付けられた。その菅氏が「覚悟」を曲げてまで不可解な説明を繰り返さなければならないほど、桜を見る会は安倍政権にとって都合の悪い話なのだ。

 安倍晋三首相は「国会に求められたら説明する」と語っていたが、国会運営の主導権を握る自民党をコントロールするのは党総裁でもある首相自身だ。案の定、招致は実現しなかった。国会閉会を受けた9日の首相記者会見でも33分のうち、桜を見る会に触れたのは2分程度で、従来の説明を繰り返すだけにとどまった。首相が説明から逃げ続けるしわ寄せが、菅氏に来ているようにも見える。

 菅氏は9日の会見で「残念ながら国民に理解されていない。説明の仕方が足りないんだろう」と嘆いた。「今年の漢字」が発表された12日には、記者から「『桜』はどうか」と問われ「見たくも聞きたくもない」と語った。苦笑いでごまかしていたが、菅氏が公の場でこんな弱音を吐いたのを、私は見たことがない。

 「政治家は歴史の法廷の被告席に座る」。こう語ったのは先月亡くなった中曽根康弘元首相。説明から逃げ、無理筋を通し続ける安倍政権の姿勢に、歴史はどんな判決を下すだろうか。 (政経部次長)

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