英与党勝利 EU離脱へ混乱を避けよ

西日本新聞 オピニオン面

 英国の総選挙はジョンソン首相率いる与党保守党が歴史的な大勝を収めた。欧州連合(EU)からの離脱問題を巡り、英政界が陥った3年半に及ぶ混乱を収束させ、保守党主導の離脱を容認する民意の表れだろう。

 英国のEU離脱問題は米中貿易摩擦と並ぶ世界経済の不安定要素であり、国際社会もこの選挙に注目してきた。

 ジョンソン氏は10月にEUと新たな離脱協定案で合意しており、与党が議会の多数を占めた以上、離脱問題に一定の道筋が定まったと言える。何より懸念されていた「合意なき離脱」が回避できることは歓迎したい。

 協定案が英議会を通過すれば英国は来年1月末までにEU加盟国から外れる見込みだ。それに伴う激変を緩和する移行期間が来年末まで設定されている。この間に、英国はEUと新たな貿易協定を締結しなければならない。

 この交渉が予断を許さない。成り行き次第では再び混乱を生じかねない。まず期間が短い。EUがこれまでに締結した自由貿易協定(FTA)は発効までに最短の韓国でも4年かかっている。英国にとってEUは貿易額の半分を占める。これまでの折衝でも主張の対立点が多く、難航が予想される。

 英国はEUに加え、日米やオーストラリア、ニュージーランドといった国々とも協定を結ぶ考えで、環太平洋連携協定(TPP)への加盟も検討する。いずれも数年程度の時間を要する交渉である。ジョンソン氏は移行期間を延長せずに「完全離脱」を目指すが、混乱に至らぬよう柔軟な対応を求めたい。

 EUと合意した新たな離脱協定案にも難問がある。英国がEUの関税同盟から抜ける一方、英領北アイルランドにはEUの通関ルールを適用する内容が軸となっているからだ。具体的にどのような制度になるのか。長年紛争が続いた北アイルランドだけに対応を誤ると、深刻な懸念材料になりかねない。

 英国でもEU残留の声が強いスコットランドは選挙結果を受け、分離独立を求める動きが再び強まる可能性もある。安定多数を握ったとはいえ、ジョンソン氏が強硬な議会運営で反発を招けば、連合王国としての統一も揺らぐことになりかねない。国際社会にとっても大きな不安定要因だ。

 英国社会は離脱か残留で二分され、国民には疲労感が漂い、「決められない政治」にいらだちが強まっていた。保守党は離脱問題で国民の支持を集めたものの、政策全般まで信任されたと言えるのか。ジョンソン氏はまず国内の「分断」の解消から始めるべきだ。

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