「脊振ジビエ」ブランド化 吉野ケ里町や神埼市で捕獲のイノシシ

西日本新聞 佐賀版 穴井 友梨

 イノシシやシカなど野生動物の食肉「ジビエ」。近年はヘルシーな食材として注目され、県内でも肉や料理を提供する店はあるが、日常的に食べる機会は少ないのが現状だ。吉野ケ里町と神埼市の脊振山系で捕れたイノシシが「脊振ジビエ」としてブランド化されていることを知り、取材に向かった。

 ジビエの利活用に取り組む「日本ジビエ振興協会」によると、ジビエとは狩猟の対象となる野生の鳥獣肉やその料理を指すフランス語。家畜の肉よりも鉄分やタンパク質を豊富に含むのが特徴で、近年は鳥獣被害対策に加えて観光資源化や食文化の創出による地域活性化にもつながるとして注目を集める。

 吉野ケ里町と神埼市でも農作物を食べられたり、畑を掘り返されたりするなどの被害が発生しており、被害防止のためイノシシを駆除。捕獲場所で埋めて廃棄処分する手間を省いて肉も有効利用しようと、2018年6月、脊振ジビエを売り出した。

 肉は吉野ケ里町の脊振山系鳥獣処理加工センターで処理。県猟友会の神埼支部に所属する猟師が捕ったイノシシを迅速に解体して冷凍する。血抜き後1時間以内に持ち込まれ、個体ごとに傷や内臓の異常がないかなど食用に適しているか検査するため、新鮮で高品質な食肉に加工できる。

 センターを見学した。年末年始を除く毎日午前中、5、6人の猟師が常駐してイノシシの個体検査から製品化までを手掛ける。搬入したイノシシは高温、高圧洗浄機で洗って皮をはぎ、内臓を出した後で台にのせて解体。スライスしてパック詰め後に出荷する。

 施設は地元の猟友会員でつくる一般社団法人が管理、運営を担う。代表理事の大坪広喜さん(76)は「ジビエ利用には処理の速さが命。安心、安全な食肉としてもっと地元の特産になってほしい」と話した。

 イノシシはどのように捕れるのだろう。大坪さんに箱わなを見せてもらった。獣道の中に置かれた長さ1・5メートル、幅70センチほどのおりに、餌の米ぬかが入っている。イノシシが入ればもりや空気銃などでとどめを刺し、センターへ運ぶ。

 「1カ月に1頭捕れればいい方。わなを自然に近い状態で置かないとイノシシは寄って来ず、失敗すれば危険を学んで捕れなくなる。戦いです」と大坪さん。人間とイノシシの知恵比べ。猟師たちの創意工夫と苦労の積み重ねがあり、肉は食卓へ届く。

 販路開拓やPRにも力を入れる。吉野ケ里町産業振興課によると佐賀ではイノシシを食べる習慣は根付いておらず、「品質の悪い肉を食べて『硬い、獣臭い』というイメージを持つ人も多い」。イベントでの提供などを通して認知度向上に尽力する。「とにかくまずは食べてみてほしい。おいしさに驚きますよ」

 それならばと、脊振ジビエを料理してみた。フライパンで両面を焼いて塩こしょうを一振りした焼き肉に、肉を野菜と一緒に煮込むだけのイノシシ鍋。「なるべくシンプルな方がおいしい」という大坪さんの助言もあり、鍋はみそと白だしのみで仕上げた。どちらも簡単に調理できた。

 焼き肉では濃厚なうま味が感じられ、脂身もあっさりしておいしい。同僚と囲んだイノシシ鍋も「全然臭みがない」「意外に軟らかい」などと好評だった。

 脊振ジビエは神埼市と吉野ケ里町の道の駅や物産館のほか、スーパー「マックスバリュ」の南佐賀店などで手に入る。猟師たちの手で丁寧に食肉加工され、県内でも気軽に手に入る脊振山系のイノシシ肉。滋味に富む山の恵みを一度味わってみてはいかがだろうか。(穴井友梨)

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