手届く高さに立派なリンゴ 観光農園、新栽培に挑戦 嘉麻市

西日本新聞 筑豊版 長 美咲

 嘉麻市馬見にある観光農園「九州りんご村」で、変わった植え方をしている果樹園を見つけた。リンゴの木といえば、高くて太い幹から枝が伸び、実がたわわになっているイメージを持っていた。だが、その果樹園で栽培されているリンゴの木は細長く、狭い間隔で植えられていた。“不思議なリンゴ畑”の謎を探ろうと、畑を所有する「三翠園」を訪ねた。

 「イタリアが発祥とされる『高密植わい化栽培』に取り組んでいる。九州ではまだ、誰も挑戦していないのではないか」。三翠園を営む赤地正志さん(46)は、新たな栽培方法で育てたリンゴをいとおしそうに眺めながら、取材に応じてくれた。

 赤地さんによると、通常のリンゴ栽培では、苗木は大きく育つことを見込み4メートル間隔で植える。それでも成長が進むと枝が重なり合い、日当たりにばらつきが生じて、花芽が育ちにくくなったり、大きさや色づきがふぞろいの果実ができたりしていた。

 高密植わい化栽培の「わい化」とは「果樹などの成長を小さく抑える」という意味。赤地さんの園では、背丈が3メートルほどで止まるように改良された「わい性台木」と呼ばれる苗木を、80センチ間隔で植えている。

 枝が育ってくると、斜め下に向かうよう「下垂誘引」を施す。この作業の結果、枝全体に日光が当たり、花芽がつきやすくなるほか、色づきや大きさがそろったリンゴができるという。

 背丈があまり高くならないため「実の約6割が片手で収穫でき、手入れもしやすくなる」と赤地さん。狭い間隔でたくさん植えることから、収量も通常の2~3倍になるそうだ。

   ◇    ◇

 「あの一番おいしそうなリンゴがほしかった…」。赤地さんがこの栽培法に取り組むことになったのは、小さな子どもやお年寄りが、残念そうにつぶやく一言がきっかけだった。従来の栽培法では、大きくて色づきのよいリンゴは、日当たりがいい、高い場所に実ることが多かった。

 「誰でも手が届く高さで、おいしいリンゴを作れないか」。インターネットで解決策を探し続けた赤地さんは高密植わい化栽培を知ると、1990年代に全国でいち早くこの栽培法を取り入れた長野県に飛んだ。

 2015年から、りんご村と気候が似ている同県松本市への視察を重ね、栽培法を研究。休耕地となっていた農地にリンゴの木を支える設備を整え、17年から栽培を始めた。

 今年で3年目。赤地さんは「通常の5倍近くの苗木が必要で、施設の整備を含めると初期投資はそれなりにかかる」と指摘。ただ、「作業はしやすく、日当たりがいいために安定した品質を保てるなど、メリットは多い。観光向けのリンゴ園に合った栽培法だ」と力を込める。

 木1本当たりの収穫量が増え、リンゴも大きく育つようになったため、来年夏からリンゴ狩り用に運用を始める予定だ。「子どもや高齢者、体に障がいがある人も、みんながリンゴ狩りを満喫できる場所になれば」。赤地さんの挑戦は続く。(長美咲)

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