身近に感じて実現へ 坂本毅啓氏

西日本新聞 オピニオン面

◆地域共生社会

 「ヤンキー君と白杖ガール」(うおやま、KADOKAWA)という漫画をご存じだろうか。地域で最も恐れられているヤンキーの男子と、弱視の女子高校生を中心としたラブコメディーである。ヤンキーにならざるを得なかった地域からの排除、視覚障害者が抱える悩みや困難等を時にシリアスに、時にコミカルに描かれている。読み手に障害とは何か、福祉とは何かを自然と考えさせてしまう不思議な漫画である。

 2017年に厚生労働省の地域力強化検討会は「地域共生社会の実現」を掲げた。地域共生社会とは、「社会的孤立や社会的排除をなくし、誰もが役割を持ち、お互いに支え合っていくことができる」社会のことである。その実現のためには「他人事を『わが事』に変えていくような働きかけ」が必要であり、地域活動などに取り組む地域住民と福祉専門職や行政との連携、「支え手」と「受け手」が固定されない多様な参加の場などが重要であるとされている。

 それでは、我々(われわれ)は社会的孤立や社会的排除のことに関心を持ち、積極的に地域活動に参加しようと考えているのか。私が以前関わった調査では、地域活動に関わる意識はあっても、スポーツや文化・芸術的活動に関心が高く、福祉的な日常を支えるような活動への関心は低いという結果が出た。さらに地域活動に参加したことがない人は、近場で、活動内容が易しく、時間に縛られないことが参加条件であるという結果も出た。地域共生社会の実現を担える地域住民は、実は少ないのかもしれない。

 一方で、地域活動によって支えられた経験のある人や、当事者と関わった経験のある人は、地域や他者のために役に立ちたいという意識を持ちやすい。大学生が関わった、ある小学生は「自分も大学生になって活動に参加する」と言い、保護者は「自分たちにもできる役割を担いたい」と言ってくれた。家族に福祉サービスの利用者がいたり、同じ小学校に障害児がいたという人は、福祉への関心が高まりやすい。まずは身近に感じることからなのだ。そのために、先の漫画を手にすることも、地域共生社会の実現に向けた一つのヒントとなるのかもしれない。

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 坂本 毅啓(さかもと・たけはる)北九州市立大地域共生教育センター副センター長 1975年生まれ、大津市出身。2010年から北九州市立大に勤務。同市で高齢化団地や生活困窮世帯の子どもたちへの支援に携わる。専門は社会福祉学。

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