「指定」なくても福祉避難所の運営訓練を 学校、ゲームなどを通じて

西日本新聞 くらし面

 新局面 災害の時代―後悔しない備え❸

 災害時の避難所に指定されている学校はもちろん、指定されていなくても避難所開設の訓練をしておく必要がある-と、学校の先生方は自覚されていますか?

 2016年の熊本地震の際、自宅の倒壊を恐れた住民が多数、指定避難所であるなしにかかわらず近所の学校に押し寄せ、大学を含め各学校は避難所を開設せざるを得ない状況になりました。その一つ、指定避難所ではなかった益城町の広安西小が、見事に運営されたことをご記憶の方も多いと思います。

 井手文雄校長(当時)はカーペット敷きの校長室や畳の部屋を高齢者などの災害弱者に、体育館は若い健常者に振り分け、避難所を設営されました。

 校内に「内閣」を組織し、教師らを食事の配膳や清掃などの担当大臣に任命し、お笑い担当大臣までいました。子どもらにも避難所内の「広西おたすけ隊」で役割を与え、やる気と責任感を引き出したのも素晴らしかったと思います。

 さらに高度な運営を実現したのが、同じく指定避難所ではなかった熊本学園大でした。重度ではないものの障害のある60人の方々が、ピーク時には690人に上った健常者と一緒に生活する避難所を、1カ月以上にわたり運営されました。

 「管理はせず、配慮する」を原則に、社会福祉学部の教員を中心に学生とともに、専門や被災地支援の経験を生かし、現場に即して多様なニーズに応えていきました。教育上の意義からも若い力を借りながらの主体的な運営手腕には脱帽です。そのうわさを聞いて福岡や福島などからも福祉の専門家が支援に来ました。

 災害が激甚化する中、福祉避難所が開設されても、すぐそこに移動できないケースがあります。とりあえず近場に身を寄せ合い、手を貸せる人が少しお手伝いする形で、軽度の障害がある方も一緒に過ごす避難所へと形を整えていくことが必要です。

 熊本学園大は、障害者を切り分けて対応してきた日本の避難所制度に一石を投じ、通常の避難所も共生の場にできるという明るい展望を示してくれました。

 ただ、緊急時に、組織の長としてだけでなく、人間としてなすべき判断を、ぶれずに人道優先でできるリーダーはまれです。

 平時から自治会やPTAなどが自ら、避難所運営ゲーム(通称HUG=ハグ)を試すなど、災害弱者も、LGBTの方も、ホームレスの方も、ペットも含め多様性を受け入れる合意と、それを踏まえた避難所の開設・運営準備をしておかなければなりません。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント❷
 避難所運営ゲーム=避難者の年齢や性認識、国籍やさまざまな事情を書いたカードを用い、避難所の部屋割りを決めたり、次々に起こる出来事への対応を考えたりする模擬体験ゲーム。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

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