【動画あり】よみがえれ九大生の「大学湯」 交流拠点化へアート展

西日本新聞 社会面 今井 知可子

 九州大の学生が多く暮らした福岡市東区箱崎で、80年にわたり親しまれた銭湯「大学湯」。2012年の廃業後、再利用されずに時間が止まっていた建物で16日から、箱崎で生まれ育ったアーティスト、銀ソーダさん(24)のインスタレーション(空間芸術)作品展が開かれる。幼いころ大学湯に通った銀ソーダさんは、住民や元学生たちの思い出話を積み重ね、大学湯の「記憶の蓄積」をイメージ。「九大移転後の箱崎の未来図を、この場所から描きたい」と意気込む。

 大学湯は1932(昭和7)年、九州帝国大の学生で賑(にぎ)わう箱崎に誕生した。創業者は2007年に96歳で死去した石井フミさん。第2次大戦で夫を失い、4人の子どもを育てながら経営した。終戦、復興、経済成長期…。地元の住民や学生らが連日通い、大相撲九州場所がある秋には力士たちも訪れた。

 銀ソーダさんは母、祖母に連れられてよく大学湯に通った。ガラス戸をガラリと開けると押し寄せる湯気と、高い天井に響く客たちのざわめき。洗い場のタイルの上を人々の汗と疲れを乗せて湯が流れる。それを眺めるのが好きだった。「創作の原点にいつも大学湯の光景がある」と話す。

 石井さんの孫の石田健さん(65)は、思い出が詰まった建物をそのままの形で残すことを望んでいた。水の流れをテーマにした作品を多く手掛ける銀ソーダさんと出会い、「大学湯の記憶がよみがえる」と作品展を打診したところ、銀ソーダさんも快諾した。

 作品は大学湯のひびの入った壁、雨漏りする木の天井などをキャンバスに見立て、アクリル画と布を貼り合わせて、水が流れる様子を立体的に表現した。

 「箱崎に残るたくさんの思い出をつないで、大学湯の再生の一歩になれたら」と銀ソーダさん。建物は作品展をきっかけに、住民の交流拠点として存続を目指すという。作品展は24日まで。 (今井知可子)

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