反ドーピング 東京を不正排除モデルに

西日本新聞 オピニオン面

 薬物の不正使用をスポーツの世界から排除するモデルを示せるだろうか。来年の東京五輪・パラリンピックに大きな宿題が課されたと考えるべきだ。

 国家ぐるみのドーピングが疑われてきたロシアが今後4年、五輪などを含む主要なスポーツ国際大会から締め出されることになった。世界反ドーピング機関(WADA)の決定だ。ロシアの検査機関に極めて悪質な不正が見つかったという。

 世界最高の競技者が集うという観点からは、東京五輪・パラにスポーツ大国ロシアの不参加は残念でならない。ただ、この事案の内容を踏まえると、やむを得ない措置だろう。

 ロシアで2014年、元選手らの告発により陸上界の組織的ドーピングが発覚し、翌年、WADAはロシア反ドーピング機関を資格停止処分にした。WADAは全容解明に向けて18年、モスクワ検査所の保管データの提供を条件に資格停止を解いたが、ロシア側は態度を改めるどころか、データに多数の改ざんや削除があったという。隠蔽(いんぺい)を図っていたことになる。

 ロシア側は決定を不服としており、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てをする公算が大きい。

 薬物使用によって筋肉増強や興奮をもたらし競技力を上げる行為は、スポーツの公平・公正の精神に反するばかりでなく、その選手の健康まで損なう。青少年を含む社会全体への影響も大きく、国際社会が厳正に対応するのは当然である。

 日本では風邪薬などの成分が違法薬物に該当し、処分を受ける例が散見される。反ドーピングの意識を高め実践するのはもちろん、こうした不用意な結果にならないよう選手、関係者は細心の注意を払いたい。

 東京五輪・パラでも、従来以上に不正を見逃さない十分な検査体制が求められる。国際オリンピック委員会(IOC)は約11億円の予算をかけて事前検査を過去最大規模にする計画だ。その実効性には世界が注目している。今後のお手本となる取り組みを期待したい。

 東京五輪・パラには、厳密な検査で潔白が証明されたロシアの選手たちが個人資格で参加するとみられる。国旗の下には集えない彼らだが、開催国として偏見なく迎え入れたい。

 ロシアのドーピング問題の背景には、スポーツの成績を国の威信と結び付けた行き過ぎた国家主義がある、と指摘される。「五輪は選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と五輪憲章はうたっている。東京五輪・パラを、スポーツ本来の価値と意味を再確認する場としても位置付けたい。

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