アイドル編<445>イントロ 一音聴けば

西日本新聞 夕刊 田代 俊一郎

 テレビ番組の「クイズ・ドレミファドン!」(1976~88年)はイントロクイズの元祖だった。導入、前奏部分を聴いてその歌、曲名を当てるクイズだ。福岡市の会社員、永江幸司(46)は少年時代、この番組を見ながら歌によっては密かに「ぼくの方が速い」と悔しがった一人である。特に80年代のアイドル歌手、菊池桃子の歌であれば誰にも負けない自信があった。テレビ、歌番組、アイドル歌謡。永江たち世代は70、80年代のテレビ文化を全身で受け止めた。 

 「小学生の時はテレビのチャンネル権を三つ上の姉が握っていました。姉はキャンディーズやピンク・レディーを見て、フリを真似していました」 

 その後、永江は少しずつチャンネル権を奪還し、自分の好きなアイドル歌手を追うようになった。高校時代は登下校時に、レンタルCDからダビングしたカセットをウォークマンで聴ながら通った。 

   ×    × 

 永江が悔しい思いを晴らすのは福岡市の歌謡曲バー「スポットライト」の天神店で定期的に行われている「イントロクイズ大会」だ。その道の猛者たちが集合する。店内には横綱、大関など大相撲に模した番付表が掲げられている。永江は2010年ごろから毎年、参加し、横綱を含め常に三役以上に顔を出している。 「上位戦になれば最初の一音、半音の争いになりますね。イントロがギター音だと高低がありますが、ドラムは強弱なので難しい」 ある意味、マニアックな世界ではあるが、70、80年歌謡の奥深さを知ることができる。わずか10秒前後のイントロ。名作小説の書き出しのようにその歌、曲の世界観への導火線、伏線だ。その瞬間の芸を当時の作曲、編曲家は競い合った。

 「イントロを聴けばメロディや歌詞が自然とわいてくる。当時のイントロはバリエーションが豊富です」

 数秒聴けば、誰でもわかるー昭和歌謡の持っていた魅力だった。 

 永江はイントロを含めた好きな曲について「折々に違います」と前置きして、今の季節に合った菊池のクリスマスソング「雪にかいたLOVE LETTER」(84年)を挙げた。年明け早々のクイズ大会にも出場する。 

 「このクイズ大会で出会った人とは肩書きなしでつきあえる友人になった」 

 永江にとってイントロは曲だけでばく、仲間を広げる前奏でもあった。 

  =敬称略 

  (田代俊一郎)

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