教職員のハラスメント 「孤立する先生」をどう守る?

西日本新聞 くらし面

 神戸市の小学校で教諭4人が同僚をいじめていた問題は、第三者の介入も自浄作用も乏しい教育現場の「閉鎖性」を明らかにした。来年6月には職場にパワハラ防止を義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が施行する。教育現場では、既にセクハラやマタハラで先行しているはずの研修や相談体制も地域によって差があり、対策は不十分だ。

神戸と同じ閉鎖性、九州でも

 九州北部の公立学校で任期付き職員だった女性は妊娠中の3年前、不審者対応の研修で、男性教諭から刺股で突かれる不審者役を当てられた。「妊婦なのでできません」と断ると、同僚らがいる職員室で「なんでできんのか、おまえ係やろうが」と怒鳴られた。今年3月には2人目の子を流産。体調が回復せず、上司の女性教諭に1週間の休暇を電話で求めると「迷惑を掛けてるんだからひと言(謝罪を)言いなさいよ」とののしられたという。

 女性は「幼い命を大切にできない人が、子どもを教育する資質があるのか」と憤る。契約期限を迎えた今春、離職した。同校ではこの間、ハラスメント防止の研修はなかった。

 北九州市教育委員会が昨年6月、教職員に実施した調査(3831人が回答)で、パワハラを受けた経験がある人は727人(19%)、セクハラは383人(10%)だった。全教北九州市教職員組合女性部の2年前の調査では「校長室から何時間も出してもらえず、校長に人格を否定する言葉や罵声を浴びせられた」「生理休暇を取ろうとすると『女はいいなあ』と言われた」などの訴えもあった。

防止研修に「限界」の指摘

 現在、全ての事業主は相談体制の整備などセクハラ、マタハラ防止の対策を取る義務があり、地方自治体にも適用される。

 しかし企業と異なり、公務員は労働局による是正勧告の対象外だ。公立学校は文部科学省が学校を管理する教委に指導・助言するが、教委が学校に取り組みの報告を求めるなど踏み込んだ法的権限はなく、監督機能は十分といえない。そもそも「『法律は企業の話で教育現場は違う』という考えが根強く、教委や学校の順法意識は低い。教委職員は教員上がりの人も多く、チェックが働きにくい」と、「職場のハラスメント研究所」(東京)の金子雅臣所長は苦言を呈する。

 研修は最も基本的な防止策だが、実施は各教委でばらつきがある。九州各県・政令市教委のうち、ハラスメントに特化した研修を全校で必須としているのは北九州市、宮崎県(セクハラのみ)。福岡県、福岡市、大分県、長崎県などは学校の判断に委ねている。

 研修も限界がある。女性教諭へのセクハラ行為で、15~17年に懲戒処分を受けた北九州市と長崎県の男性教諭3人は、事前にハラスメント防止の研修を受けていた。うち北九州市の小学校長は研修の講師だった。日本女子大の坂田仰(たかし)教授(公教育制度論)は「研修は、現状では問題が発覚したときに責任を逃れる『言い訳コンプライアンス』になっている。教職員が研修内容をどう受け止め、職場に定着したかという効果を検証して初めて有効な研修ができる」と指摘する。

スクールロイヤーにも期待

 教員間のハラスメントにどう対応したらいいのか。研究所の金子所長は「学校は子どもに大声で叱る行為が日常的に容認される独特の空間。まずは全自治体で被害を調査し、実態を明らかにすべきだ」と語る。坂田教授は「子どものいじめ調査のガイドラインと同様、教員間の事案でも第三者が調査する体制づくりが望ましい」と注文する。

 学校でのいじめ防止などを巡り、法的な助言を行う弁護士「スクールロイヤー(SL)」の活用も期待される。学校側の顧問弁護士とは異なり、SLは中立の立場。自治体が独自に配置するなど近年広がりを見せている。福岡県でSLを務める吉田俊介弁護士は「教員間のトラブルは、被害者だけでなく子どもの利益や適切な教育環境も損ねる。法律の専門家が関わることは学校現場のハラスメントをなくす方策の一つだ」と前向きに評価した。

外部相談窓口の存在、浸透せず

 教職員のハラスメントに関する相談窓口は各教育委員会にあるが、教委と学校は人事上の行き来が多く、被害を受けた側は情報漏えいへの懸念から敬遠しがちだ。相談時間も平日の日中が多く、利用しにくい実態が指摘されている。

 一方、消費者庁の2017年度の調査で、公益通報者保護法に基づく公務員の通報窓口は全都道府県が設置。ただ、市区町村単位の設置率は55%にとどまる。九州では佐賀、大分両県が8割を超える一方、福岡県53%、熊本県32%が平均を下回り、鹿児島県は28%と全国で6番目に低い。

 弁護士や社会保険労務士などが対応する外部窓口を設けているのは25都府県教委。九州では大分、鹿児島以外は設けているが、17年度の通報件数(外部以外の庁内相談窓口も含む)は、佐賀4件、長崎6件でその他はゼロだ。背景には外部の通報窓口が教職員らに浸透していない現実がある。(国崎万智)

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