学生たちの日韓交流観 藤崎 真二

西日本新聞 オピニオン面 藤崎 真二

 ソニーの一眼レフカメラを手に、釜山の男子学生が色づいた紅葉に向けて盛んにシャッターを切った。「高そうなカメラやね」と問われ「アルバイトして買いました。それだけ満足できると思って。時給は800円」と笑顔で答える。「僕は夜の飲食店やから1100円ぐらい」と、福岡の男子学生が応じた。

 そんな何げない会話を日韓の学生が交わした。長崎県・対馬で11月、九州産業大(福岡市)と釜山外国語大(釜山市)の6人ずつ計12人が、名所のもみじ街道を一緒に歩いた。ツアーは、JR九州高速船が博多-比田勝(対馬)、比田勝-釜山航路の活性化と対馬への観光客の増加を図ろうと、釜山韓日親善協会などの協力を得て実現した。

 間もなく兵役に就く男子の話に聞き入った九産大の女子は、Kポップの話でも盛り上がった。アイドルグループ「嵐」が好きで日本語を学び始めた朴善娥(パクソナ)さん(20)は「人と人の仲はいい。解決すべきは政治家同士だけだと思う」

 小4から家族で釜山に行っていた江川花さん(20)は訪韓20回以上。隣町に遊びに行く感覚だ。大好きな韓国料理が楽しみで、店のおばさんたちはいつも優しく温かい。

 意見交換の場もあった。「大人世代も巻き込んだイベントが必要」などの声のほか江川さんが印象に残ったのは釜山の男子の話だ。「今、国を支えるのは親の世代。日本を悪く思っていない僕らの世代が支える時代になったら、良い関係になるはず」。でも今の状況はやはり悲しい。「政治のためだけに両国関係が悪くなるのはもったいない」

 日本では韓国語を学ぶ若者が増え、韓国では日本語は今も人気だ。韓国語能力試験の申込者数は5年連続で増加し今年、約2万7千人。10年前の2・7倍で、特に10~20代に限ると4・7倍にもなる。

 一方、韓国での日本語能力試験の申込者数は今年、年2回のうち7月だけでも約5万5千人。中国語人気もあって減った時期もあったが、3万人台に1度落ち込んだ15年を底に、増加に転じている。

 釜山市が関わったスポーツ交流は今夏、中止になった。通訳ボランティアができずに残念だったと話す女子もいれば、母親に「日本の服を着ないで」と頼まれる男子もいた。学生たちは日韓関係が簡単ではないと実感している。それでもあきらめない。

 「現代と伝統のバランスの良さが日本の魅力」という金学真さん(23)は強調した。「日本人に直接会っていない人やマスコミでしか知らない人が問題。だからこそ民間交流が欠かせない」 (論説委員)

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