【劇評】自分を裏切らない、潜伏キリシタンの女性描く 「五島崩れ」

西日本新聞

 キリシタン禁教下、幕末から明治初年の長崎県・五島列島を舞台に、潜伏キリシタンの女性の生涯を描いた演劇「五島崩れ―椿の島のアヴェ・マリア」が13日、福岡市博多区の博多座で上演された。相次ぐ悲運にも、家族愛を失わず暗黒の世の片隅を照らす生き方は、どんな時代にも響く輝きがあった。(敬称略)

 主人公は、半農半漁の家の育ちだろうか、久賀島の少女ミツ(春日遥香)。同じ潜伏キリシタンのいいなずけが長崎からの帰途、取り締まりから逃れた後、海に投じた神父からの授かり物を探すうちに溺死する。神様はなぜ「こげな、むごか事ば」と信仰が揺らぐ。

 次に出会うのが取り締まり側の役人で、仏教徒の慶馬(高木勝也)。見初められて求婚される。嫁げば「転び者(棄教者)」のそしりを受けるかもしれない。尻込みして遠ざけるが、熱心な求めに応じる。福江島での幸せな新婚生活と懐妊に喜ぶさなか、久賀島から届いたのは、実家の母や弟らキリシタンの島民たち多数が狭い牢屋(ろうや)に押し込められ死者が相次いでいるとの知らせだった。

 帰るか、残るか。身を裂く葛藤の先に帰郷を決断するミツを、バレエダンサーで俳優初挑戦の春日が好演した。

 「気でも狂うたか」と驚く慶馬に、陰でのキリシタン信仰を告白。激高を買うが、静かに両手をついて帰郷の許しを請う。見せ場だから、もっと修羅場を強調して潜伏信仰の悲哀を表現しても良かったかもしれないが、ミツは静かに決意を伝える。背筋の伸びた演技はりんとした強さを感じさせた。

 帰郷後、ミツが牢屋の中の母親ヨモ(玄海椿)らを助け出す場面では、玄海の演技が光った。張り付けの刑を解かれ死期が迫る息子に駆け寄り、号泣する。その爆発的な表現は弾圧される側の魂を感じさせた。舞台の随所で、迫害下の物語という舞台の雰囲気を濃い演技で生みだした。

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