【劇評】自分を裏切らない、潜伏キリシタンの女性描く 「五島崩れ」 (2ページ目)

西日本新聞 吉田 昭一郎

 原作は、五島列島で数多くのキリシタンが拷問や処刑で亡くなった史実「五島崩れ」に基づき、芥川賞作家の森禮子(福岡市出身、故人)が書いた同名小説。キリシタン禁教・弾圧を、異質の排除と同調圧力の極限と見て取れば、今の時代だからこそ、この作品と舞台からくみ取りたいものが確かにある。

 その場の大勢に身を任せず、自分をあざむかず、自分を裏切らないミツの生き方は、無理な同調よりも一人一人の個性を尊重し合うベクトルに通じる。困難な生き方に違いないが、人生に悔いは残らないだろう。

 終幕前、父親が久賀島出身という五輪真弓の「時の流れに~鳥になれ」の歌が舞台に流された。〈鳥になれ おおらかな つばさをひろげて〉。自由への願いが舞台と響き合う。鳥になって舞うミツを、春日は得意のバレエでのびやかに表現した。それぞれの生を慈しみ、たたえるニュアンスを感じる。最後は出演者全員で大合唱し、さわやかな終幕となった。

 劇中、長崎県平戸市の生月島の人たちが、伝承する唄オラショを披露した。西南学院音楽主事の安積道也指揮で、福岡市を拠点に活動する混声合唱団「コーロ・ピエーノ」も合唱で舞台を盛り上げた。

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録をきっかけに、「森禮子さんの小説『五島崩れ』を舞台化する会」が有志によって結成されたのが出発点だ。多くの人たちの思いを結集した舞台だった。(吉田昭一郎)

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