「お年寄り助け隊」の街 西山 忠宏

西日本新聞 オピニオン面 西山 忠宏

 向こう三軒両隣。近所付き合いが普通だった頃の、どこか懐かしい言葉だ。高齢社会となった現在、より広い地域と付き合う工夫が求められる時代になったようだ。

 「お年寄り助け隊」は北九州市の八幡工業高の生徒らが2015年度、結成した。学校周辺の高齢者から寄せられる「困り事」に学校で習った技能や若さを生かして無料で対応する。庭の木の剪定(せんてい)をはじめ、溶接技術を使ってカーポートを修理すればトイレのドアノブだって直す。

 師走に入り、熊西市民センター(同市八幡西区)であった住民の餅つき大会ではきねを握って活躍した。その一人、友松秀隆さん(17)は「助け隊として役立ったのなら、うれしいです」とはにかんだ。

 年間の対応件数は約20件。こうした地域貢献などが評価され「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」で本年度の内閣府特命担当大臣表彰を受けた。

 ただ、助け隊を考案した山田信介教諭(56)にそれほどの笑顔はない。隊のPRは学校近くの複数の市民センターでちらしを掲示するか、学校のホームページで発信する程度。「最も困っているお年寄りには届いていないのでないか」という懸念が残る。

 老々介護、経済的に厳しい高齢者の1人暮らし…。そうした状況では余裕を失い、支援の手が身近にあっても気が付かない人がいるに違いない。実際、家庭だけで対処しようとした末に起きる悲劇は後を絶たず、16日にも福岡市で介護疲れが原因の無理心中とみられる事件が発生した。

 八幡西区と八幡東区では地域の高齢者らを支える「八幡あいあんネット」という地域組織が動き始めている。メンバーは社会福祉法人理事長、理学療法士、看護師ら有志。発案者の一人で開業医の権頭聖さん(58)は「家族力が弱り、認知症を患ったことを悲観して自殺した女性など高齢者の孤独死が相次いでいる」と組織をつくった背景を説明する。「医療、介護の公的サービスだけでは支えられなくなっている」として、地域の老人会や社会福祉協議会が続ける訪問・生活支援のボランティアらと医療・介護専門職が連絡を取り合いながら住民の「互助」を支える狙いだ。

 会則案に目指すべき方向が示してある。「だれもがとりこぼされることのない『わが事・丸ごと』の地域共生社会を実現する」

 全国以上に高齢化が進む北九州市。ここにも地域の未来を政治家や官僚任せにせず、自分たちの手で築こうとする市民がいる。 (北九州西支局長)

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