大学入試改革 民間活用ありきを見直せ

西日本新聞 オピニオン面

 2020年度から始まる大学入学共通テストの国語と数学への記述式問題の導入が見送りとなった。英語の民間検定試験導入と並ぶ大学入試改革の2本柱がともに崩れたことになる。改革は事実上白紙に戻った。

 文部科学省は大学入試改革の抜本的見直しに入る。民間活用のあり方も検証すべきだ。積み残された課題は重い。

 50万人規模の記述式解答を、短期間にミスなく採点できるのか。出願の判断材料となる自己採点と実際の得点のズレは解消できるのか。一連の深刻な懸念について、きのう記者会見した萩生田光一文科相は「安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点では困難」と認めざるを得なかった。

 遅きに失した判断と言うほかない。一連の懸念は識者や教員が以前から指摘し、導入に反対してきた。今月には高校生らが文科省前で抗議集会を開く事態にまで至っていた。

 文科省は関係者に混乱と不安を広げた責任を重く受け止める必要がある。政府全体としての判断の遅れも批判されよう。

 大学入試改革は、高校と大学の教育を一体的に変えていく「高大接続改革」の要と位置付けられてきた。

 学校教育では「話す・聞く・読む・書く」の英語4技能を育む指導が進み、全教科で思考力や表現力などの養成が重視されている。その成果を問うために浮上したのが、英語民間試験と記述式の導入だった。

 共通テストでこうした能力・学力を評価する難しさは、文科省の議論でも指摘されていた。共通テストを実施する大学入試センターでは越えられない壁を、民間企業の力を借りて克服しよう-と考えたあたりから迷走が始まったのではないか。

 英語民間試験でいえば、目的が異なる各試験の結果を一律に評価できるのか。居住する地域や家庭の経済力で容認できない格差は生じないか。記述式の正解は一つではないのに、民間業者のスタッフが短期間で公平に採点できるのか。いずれも入試の信頼性に関わる疑問だ。

 そもそも改革の原点は、知識偏重や1点刻みの選抜からの脱却、複数回の挑戦を認めることだった。その方向性に大きな間違いはないはずだ。

 ただし、共通テストの枠組みを使いながら、部分的に民間を活用すれば、十分な改革が実現できるとの発想には無理があったと認めるべきだろう。文科省には改革2本柱の政策決定プロセスの検証も求めたい。

 共通テストで基礎学力を調べ、高い思考力や英語力は、大学が2次試験で測ることが入学者選抜の本来の姿ではないか。

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