盛土造成地 「一貫点検」の仕組みを 地盤品質判定士・田尻雅則さん

西日本新聞 くらし面

 -大規模盛土(もりど)造成地の安全性確認を巡る、第2次スクリーニング作業が来年度から始まる。宅地の安全に関する評価や対策提案などに携わる「地盤品質判定士」として、熊本地震時に現地対応に当たった田尻雅則さんに、盛土造成地の現状や滑動(かつどう)崩落防止対策に向けた課題を聞いた。
 (特別編集委員・長谷川彰)

 -熊本地震では、約1万5千カ所の宅地が被害に遭ったとされる。多くの被災者の相談に応じたそうだが、専門家として、どう受け止めたか。

 「懸念していたことが起こるべくして起こった、と。盛土造成地は、水抜きした上で十分に土が締め固められていれば安全だ。ただ、熊本に限らず、心配な宅地は全国的に多いと思う」

 「特に高度経済成長期の造成地の中には、締め固めが不十分で盛り土を受け止める擁壁も弱い場所がけっこうある。バブル経済期の造成地も似た状況だろう」

 -2006年に宅地造成等規制法(宅造法)が改正され、地盤の安定性確保策が強化されて以降は改善されたと考えてよいか。

 「宅造法の規定通りに施工されていればいいのだが、適切に行われたか、点検する仕組みが心もとない。締め固めは土の質に応じてやり方がある。技術は確立されているが、コストの問題もあり徹底されているのか。擁壁の裏側部分が狭いと施工機械が入らず、不十分になることもある」

 「水抜き用のパイプは、盛り土内に砂利の層を設けて土が詰まらないよう施工しなければならないが、適切に行われているのか。それらを途中で点検する仕組みはなく、完工後はボーリングでもしない限り、確かめるすべはない」

 「住宅の建築確認申請の時、スウェーデン式サウンディング試験という手法で地盤の安定度を調べるのだが、分かるのはその時点での強さにすぎない。年月がたっても劣化しないかどうかの評価にはならない」

 「業者は基準通りに施工していると信じたいが、熊本地震時に中程度の揺れでも被害が続出した事実をどう考えるのか、という話だ。住宅建築の許可を出す機関が地盤の安定性まで検査するような、一気通貫の仕組みが必要ではないか」

 -こうした状況を踏まえ来年度からの第2次スクリーニング、滑動崩落防止事業を進める上での課題は。

 「規模の小さな市や町村は専門知識を持つ職員がいないところが大半。悩んでおられると思う。また、危険性が確認され対策事業を行う場合、地域住民の意思統一を図るのは容易ではないと思う。一部は自己負担となれば、高齢者世帯などは二の足を踏むかもしれない」

 「われわれ地盤品質判定士は、そうした人材不足の自治体の支援や、行政と住民の合意形成の仲介などで役に立てるのではないかと思う。熊本地震の宅地復旧の際も、行政の代弁者ではない第三者として、専門知識に基づく客観性と、住民の年齢や家族構成、経済力まで配慮する姿勢のバランスに心を砕いた。経験は生かせるはずだ」

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【ワードBOX】大規模盛土造成地

 丘陵や山間の谷を埋め立てたり、斜面に盛り土をしたりして造成された宅地。盛り土の部分には、地下水が底部の地山との間に蓄えられやすく、水抜きが不十分だと水圧が上昇し、地震や豪雨で滑動崩落と呼ばれる地すべりが起こる恐れがある。東日本大震災時に被害が多発したことを受け、国土交通省は、谷を埋めた盛り土の面積が3000平方メートル以上、もしくは角度20度以上の斜面に盛った土の高さが5メートル以上の造成地を対象に、安全性の確認調査と滑動崩落対策を進めている。

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【ワードBOX】地盤品質判定士

 宅地の地盤の安全性について、造成業者や住宅メーカーと宅地購入者の間に立ち、地盤工学などの知識や調査に基づいて助言や提案を行う専門家。東日本大震災で宅地被害が続出したことを受け2013年、地盤工学会などが創設した資格。国土交通省の登録資格として認定されており、現在、全国に約千人の判定士がいる。協議会事務局(東京)=03(3946)8766。

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