見過ごされた“警告” 市長、大型工事次々着手 財政危機の杵築市

西日本新聞 大分・日田玖珠版 稲田 二郎

 大分県杵築市の財政危機が表面化した。財政の硬直度を示す経常収支比率が100%を超える危機的状況を受け、市は緊急財政対策に着手するが、実は5年前からこの状況を予想し、監査委員は何度も財政運営の是正を求めていた。緊縮財政にかじを切る機会があったのになぜ手を打たなかったのか。自らの施策を推し進めることに傾注する永松悟市長に対し、市幹部が進言できなかった状況が透けて見える。

◆行革実行せず

 「財政危機に気付いたのは今年5月か6月だった」。永松市長は市の2018年度決算を見て、市の貯金に当たる財政調整基金が加速度的に目減りしていることを把握。経常収支比率も適正水準とされる80%前後を大きく上回る100・9%になることが分かり、事態の深刻さを理解した。

 この状況は事前に予想されていた。市は14年度から5年にわたる行財政改革を打ち出し、実行しなければ18年度に経常収支比率は100%を超えることを明らかにしていた。

 だが、行革の基本線である職員削減に着手せず、逆に国が事業費の一部を負担する合併特例債を使い、大型工事に次々と着手。一部は市が事業費を負担するために歳出が急増し、実質的な単年度収支は16年度のマイナス6261万円が18年度にはマイナス7億4907万円まで膨らんだ。

 監査委員は16~18年度の決算で深刻な財政状況を憂い、「歳入に明るい材料はなく、歳出の見直しを一層進める必要がある」(16年度監査)などと警告。市議会でも財政問題は取り上げられた。だが永松市長は19年度、厚生労働省のキャリア職員らを市に新たに受け入れるなど、財政再建を考慮する姿勢はあまり見られなかった。

◆ツケは住民に

 杵築市役所山香庁舎で18日夜にあった緊急財政対策の住民説明会。「なぜ、こんな事態になったのか」とただす住民に対し、佐藤剛財政課長は「問題は認識していたが、市長を含めて協議が甘かった」と述べた。取材に対しては「市長への注進が甘かった」「市長の重点施策ができるよう、他で財源を手当てするのが私の役割」と責任を背負う。

 永松市長は県庁OBで、現在は2期目。財政危機に気付くのが遅れた点に関し「市の人口減や高齢化が進み、このままでは『座して死を待つ』ことになると考え、基幹産業の農林水産業の活性化に力点を置いてきた」といい、そのために「(財政の)見通しが甘くなった」と釈明した。

 市は今後、単年度の収支で行政運営できることを目指し、人件費の削減やイベントへの補助金縮減など、あらゆる事業の見直しに着手するとともに企業誘致などで歳入増を図るという。ただ、住民からは「財政危機で全国ニュースになった自治体に企業や人が来るはずがない」と不安の声が漏れる。

 説明会で、ある男性は「市民にいい顔をして、金がなんぼでもあるような感じで事業をやってきた」と永松市長を批判した。市民サービスの低下は避けられないが、市民の間には「行政のツケを住民に押しつけるのは納得いかない」との怒りが渦巻いている。 (稲田二郎)

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