「ご静粛に願います」…

西日本新聞 オピニオン面

 「ご静粛に願います」。国会審議の花形、予算委員会で委員長が叫ぶ場面は珍しくない。委員長に「国民注視の論戦ですからどうかご静粛に」と言わせた論戦は、あの時が希少な例だろう

▼1983年、社会党(当時)委員長になったばかりの石橋政嗣氏が、首相就任翌年の中曽根康弘氏と対峙(たいじ)した。先日続けて鬼籍に入った2人だ

▼安全保障問題を巡るその論戦は、防衛庁の局長の短い答弁を挟んで2時間続いた。「理念より結果だ」と中曽根氏、「理想なしに何を追求するのか」と非武装中立論の石橋氏。やじを制して予算委員長が「真剣な議論が続けられておりますから」と再三諭す場面も含め、詳細は国会会議録検索システムの「昭和58年9月19日衆院予算委」で閲覧できる

▼その後、党首討論が導入されて久しいが、中曽根―石橋のような論戦はついぞ聞かない。論を張るべきテーマを日本は持たなくなったのか。張るべき論に深みを持つ人がいなくなりつつあるのか

▼似たことが今の自民党にいえる。自由闊達(かったつ)な党内論争は今は昔。改憲派の中曽根氏と護憲派の宮沢喜一氏(2007年没)が、共に元首相として、朝日新聞の企画で4時間、論争したこともあった

▼論の構えが強固な首相がいて、理で対抗できる野党の指導者がいて、そして政権内部にも多様な考えの論客がいる。そういう健全でまっとうな政治の景色を、過去形だけで語りたくない。

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