「暮らしの中で逝く」ということ ホームホスピス、関係者が議論

西日本新聞 木下 悟

 超高齢社会の中、医療や介護が必要な人を自宅のような環境で最期まで支える「ホームホスピス」の関係者が集まったホームホスピス全国合同研修会(全国ホームホスピス協会主催)が11月30日から2日間、広島市の広島国際会議場で開かれた。九州など34都道府県と米国、台湾から福祉、医療関係者が参加。12月1日には市民公開講演会も開催。年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが命の時間をどう大切に使えばいいのかを考えた。

地域全体でケア

 研修会では、米国・ハワイの看護師で、日系人を受け入れるホームホスピスを運営する三浦佳代子さんが基調講演。ケアした30代の日系女性は、子宮頸(けい)がん末期で、結婚式直前に亡くなった。日本から駆けつけた父親がウエディングドレス姿で眠るまな娘の頭を優しくなで続けた姿から、深い悲しみが伝わってきたという。また、がんになった女児(8)は、小児ホスピスのリビングで、母親の腕に抱かれ、家族や近所の人々に囲まれて息を引き取った。最期まで意識があり「苦しい?」と聞くと「ううん、気持ちいい」と応じ、死は苦しいことでも怖いことでもないと周りの大人に教えてくれた。三浦さんは「ホスピスに関わる人は心を開いて(患者や家族の)思いを受け入れ、しっかり隣に立つことです」と語った。

 続いて、広島県尾道市医師会地域医療システム研究所の片山寿所長▽小規模多機能型居宅介護事業所「鞆(とも)の浦さくらホーム」(同県福山市)の羽田冨美江代表▽市原美穂・全国ホームホスピス協会理事長が参加し、「暮らしの中で逝くこと」をテーマにしたシンポジウムが開かれた。

 尾道市では、開業医が主治医機能を持ち、急性期病院と連携。片山所長は看護師など在宅生活を支える専門家と共に、退院して自宅で暮らせるためのカンファレンスを行い、在宅緩和ケアなどにつなげていることを解説した。

 羽田代表は、寺の住職だった男性の例を挙げた。100歳の誕生日に本人と家族、医師、介護スタッフなどが最期の迎え方を話し合い、本人の意思を尊重してさくらホームでの生活を継続。その後、男性は自宅の寺に出向いて家族と花見を楽しんだ6日後、天寿をまっとうした。羽田代表は「住み慣れた地域で暮らし、老いる人を支えるために、その人の暮らしぶりを守ることが大切」と強調した。

 市原理事長は、住んでいる家の空気感や周りの声などを含めた、日々の生活を取り巻く総体を「暮らし」と位置づけ、暮らしの中で最期まで生きることを支えるのがホームホスピスの目的と説明。広島県の実践を「地域全体がケアの現場になっているのは、ホームホスピスと同じ」と感想を述べた。

諦めずに生きる

 市民公開講演会には、宮崎大医学部大学院の板井孝壱郎教授と、長尾クリニック(兵庫県尼崎市)の長尾和宏院長が登壇して講演、会場の質問を受けた。

 板井教授は、治療やどんな生き方を望むのかなどを家族と専門家が話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を障害のある新生児について行う際、たとえ限られた人生だとしても「どう生ききるか」という視点が重要と指摘。長尾院長は、認知症で要介護5の女性が、同県西宮市のNPO法人の支援を受けながら自宅で暮らし、99歳で亡くなるまで旅行を楽しんだり、自分で食事を取ったりした事例を示し「生きるとは諦めないこと」と力を込めた。

 会場からは「長生きする人が増える中、家族が介護で支えきれない例もある」「『借りをつくりたくないから他人に頼らない』という高齢者がいる」といった意見が出された。板井教授は「『孤独死でも構わない』と言う人もいるだろうが、そうした言葉に無関心になるのではなく、小さなおせっかいを続ける必要がある。それは許容されるのではないか」と発言。市原理事長は「家族だけで頑張るのでなく、他に頼ることも大事。住み慣れた場所で暮らせるように『助けて』と言える関係をつくることができる地域の力が必要だ」と総括した。 (木下悟)

     ×     ×

【ワードBOX】ホームホスピス

 病気の治療が終わったのに介護力に不安があって帰宅できない人など5、6人の利用者が民家で暮らし、訪問看護、訪問介護とかかりつけ医に支えられ、最期まで安心して過ごせる仕組み。宮崎市のNPO法人が始めた取り組みが全国に拡大。ケアの質を高めるために全国ホームホスピス協会が設立され、定期的に研修会を開いている。

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ