多様化する私立大入試 変化の時代、独自色相次ぐ

西日本新聞 くらし面 金沢 皓介 前田 英男

 近年、私立大の入試が多様化している。時代の変化に対応するため高校と大学の教育を一体的に見直す高大接続改革に伴い、各大学は新たな方向性を模索。入学者選抜に独自色を打ち出し、求める人材の確保に力を入れる。本格的な入試シーズンの到来を前に動向を探った。(編集委員・前田英男、金沢皓介)

推薦、AO入試が5割超

 私大入試でひと昔前と大きく変わった点が推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試の増加だ。特にAO入試は全国の8割の私大が採用。全入学者に占めるAO入試合格者は、2000年度の1・7%から、17年度は10・7%となった。推薦入試と合わせた17年度の入学者は5割を超えている。

 「点数絶対主義」にとらわれず、「人物評価」を軸とするAO入試は今後も広がる傾向にある。一方で、事実上の“学力不問”による弊害を指摘する声は強く、20年度から名称が変わる「総合型選抜」では学力試験が義務付けられる方向だ。

 一般入試は定員が減り、結果的に難易度は高まっているが、多様化により受験生の選択肢は拡大。最近は2教科入試や大学入試センター試験利用など比較的受験しやすい方式を選ぶ受験生が多いという。解答はマークシート式がなお目立つものの、考え方や表現力を問う記述式も増えている。

 20年度の入試改革元年を前に本年度の志願状況について、大手予備校の調査では「早慶上理」(早稲田大、慶応義塾大、上智大、東京理科大)や「関関同立」(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)といった都市部の難関校で志願者が減少。中堅校に流れる安全志向が鮮明になっているという。

 河合塾福岡校の宮崎敏彦校舎長は「昨年度と倍率は変わらなくても、要求される学力レベルが上がる可能性はある。各大学で入試の形だけでなく出題の質の変化は始まっており、どういう力が問われるのか、見極めながら学ぶことが大切だ」と話している。

「高大接続」意識、九州の私大も模索

 2020年度の大学入試改革を見据え九州の私立大も動きを加速させている。全学生のほぼ半数が留学生の立命館アジア太平洋大(大分県別府市、APU)は、21年度入学者から一般選抜(現行の一般入試)で英語と国語を必須とする。入試改革を担当する吉田知史さんは「英語で必要なのは母国語で物事を考える力で、ベースは国語だ」と狙いを語る。

 AO入試に代わる総合型選抜では立命館大の教員が開発した「ロジカル・フラワー・チャート(Fチャート)」を活用した新入試を導入する。Fチャートは(1)問題の背景を捉えて(2)問いを設定し(3)仮説を立てる。(4)仮説が正しいときに何が必要かを推論して(5)検証、分析し(6)仮説への反論(7)反論への対応(反駁=はんばく)を経て(8)さらに高次な仮説を立てて(9)新たな問いを設定する-という9段階の思考から最適解を探る手法。大陸移動説をテーマにすると、最初の問いの一例は「なぜ南米大陸とアフリカ大陸がパズルのようにきれいにはまるのか」となる。

 APUは活用法をホームページで紹介し、対策も推奨する。吉田さんは「自分で問いを立て解決する力が訓練される。高校の探究活動にも生かせるし、大学で学ぶ力につながる」。入試ではチャートを使い、自分の考えを小論文などで表現してもらうという。

 チャートを示すことで型にはまった学びにつながるとの批判もある。吉田さんは「スポーツも基本の型を覚えた上で自分なりの手法を編み出し、力を付けていく」と話す。受験生に全てを満たす解答は期待しておらず「問いを立てて考えた意見をきちんと表現できれば十分。大学卒業までに身に付けることを目指す」と言う。将来は定員枠を広げたい考えだ。

 西南学院大(福岡市早良区)は20年度から文学部を外国語学部に改組。英文学科と外国語学科を外国語学科の1学科に再編する。横断的な学びと1年の後期から留学が可能になる。

 同大は文部科学省の制度改革の趣旨に沿い、総合型選抜を19年度入学者から前倒しで導入。外国語学部では高校での学びを大学につなげようと、部活動や資格検定試験、自主的な活動や経験などを記入する志望理由書を1次選考で評価し、2次選考では講義に基づく筆記試験やグループ討論を行った。

 同大は「総合型選抜で入学した学生の成績などの検証はこれからだが、受験生と教員の接点ができたことで入学前から指導でき、初年次の教育にも生かせている」としている。

▼私立大入試の仕組み

 私立大入試は一般入試(2020年度以降、一般選抜)と、先に実施される推薦入試(同、学校推薦型選抜)、AO入試(同、総合型選抜)がある。推薦には大学が示した枠内で受験できる指定校推薦や、基準を満たせば誰でも受験できる公募型がある。学校推薦が不要なAO入試は、学力よりも入学への意欲、目的意識の高さなどが重視され、書類審査や小論文、面接のほか、プレゼンテーションや討論などで出願者の個性や適性を多面的に評価。選抜方法は推薦入試よりもバラエティーに富む。

 一般入試は大学入試センター試験が終わった1月下旬以降に行われ、入試科目は文系学部が英語、国語に地歴・公民、数学から1科目選択。理系学部が英語、数学、理科の3教科が一般的。ただ、特定科目の配点比率を高めたり、小論文のみとするケースがあったりするほか、センター試験での合否判定や英語の民間検定試験の利用も。併願が可能な全学部統一試験や試験日を複数設定し受験生が選択できる制度を導入する大学もある。

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