「地方創生」では防げない人口流出 九州の自治体、独自性に課題

西日本新聞 総合面 郷 達也

戦略はコンサルタント頼み

 人口減少対策と東京一極集中是正を目指す安倍政権の「地方創生」が来年3月で第1期(5年間)を終える。全市区町村の約半数が「将来消滅する恐れがある」との強い危機感から始まった地方創生だが、地方の人口流出に歯止めはかからず、大きな成果は得られていない。政府は20日、2020~24年度の第2期の取り組みを示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、地方自治体も年明け以降、地方版の第2期戦略を策定する流れだ。地方創生の現状はどうなのか。九州の現場を取材した。

 「シイタケ栽培など棚田景観を意識した観光プランを作り、村のファンを広げていくことが大切」

 今月4日、福岡県東峰村のキャンプ場。国の地方創生交付金を受け、村が取り組む棚田景観保全プロジェクトのメンバーの住民や村職員ら約10人が地域づくり専門家から助言を受けた。

 村の人口は約2100人、高齢化率は県内60市町村で最高の42・7%(4月現在)と過疎高齢化は著しい。60年には千人を割る試算もある。17年の九州豪雨被災からの復興と合わせ、地方創生は村振興の柱だ。

 棚田プロジェクトは古民家を宿泊施設に改修し、農産加工販売や体験イベントなどで移住、定住者の確保や集落存続を目指す計画。村企画政策課の梶原孝司係長は「単費(村単独予算)では厳しく、交付金があるので事業に取り組める」と一定の評価をする。

 ただ、村の総合戦略に掲げた70事業のうち実施できたのは数件程度。担当課は「2期目は集中して取り組む重点事業に絞る。小規模自治体には、より補助率を上げてもらえればもっと使いやすいが」と話す。

 一方、人口が約3万7千人で、この5年間ほぼ横ばいの福岡県宇美町は、国に交付金申請をしていない。「市町村の広域連携が条件になるなど町の現状に沿ったメニューが少ない。(予算がかさめば)逆に町の事業の足かせになる」(政策経営課)との判断からだ。

 担当職員は「交付金を使うことを前提とした施策は組まず、町独自の考え方を全庁的に積み上げたい」と説明した。

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 財政状況が厳しい地方自治体にとって、地方創生の国の交付金は魅力的だ。ただ問題は、その前提となる地方版総合戦略だ。公益財団法人・地方自治総合研究所(東京)が17年に実施した全国調査(1342市町村回答)によると、コンサルタント会社に委託して戦略を作成したのが1037市町村(77%)に上った。職員の事務量軽減や専門知識を補うためとの理由が多いという。

 さらにコンサルの委託先を見ると、本社が東京都にある会社の受注総額が全国の53%、計21億円を占めていた。国から地方に配分された交付金が結局、その一極集中是正を目指した東京に還流したという皮肉な結果。関係者の間では「コンサルバブル」とまで言われた。今回も既に、九州の複数の自治体で「第2期の地方創生の総合戦略はどうですか」とのコンサルの営業が動き始めているという。

 第1期も、よそにはない地域資源を発見したり、移住者による地域振興が盛んになったりといったプラスの面はあった。ただ町の将来デザインを外注し、かつ国が示した参考例にならった施策しか打ち出せなかった自治体は改善が必要だ。

 熊本県のある自治体職員は「結局、全体のパイ(人口)は増えない。地方間の人口の取り合い、奪い合いでしかない」と突き放した。第2期の柱に国は、都市部に住みながら地方に貢献する「関係人口」の拡大などを掲げるが、子育てなどの制度面の充実をしなければ根本的に人口問題の解決にはつながらない。国頼りの一辺倒に陥らず、持続可能な地域づくりができるか。地方自治体の真価が問われている。(郷達也)

【地方創生】安倍政権が2015年度から5カ年計画で取り組む地方の人口減少対策。移住や観光振興、住民が行政サービスを補完する「小さな拠点」づくりなど地方自治体の事業を支援するため、国は19年度までに総額8千億円以上の交付金を投じている。ただ18年の東京圏への転入者は転出者を約14万人上回り、東京一極集中は解消できていない。

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