みとりだけではない「子どもホスピス」 第2のわが家に…家族のケアも

西日本新聞 医療面 井上 真由美

 重い病気や障害がある子どもたちがより自分らしく過ごすための「子どもホスピス」。東京や大阪で開設が相次ぎ、福岡での開設を目指す活動も10年目を数える。資金や制度の壁は厚いが、少しずつ理解は広がっている。決してみとりだけの場ではない子どもホスピスについて考えた。

 平日の午後、静かな室内に人工呼吸器など医療機器の音が響く。福岡県宇美町の中野智見(ともみ)さん(41)は自宅リビングで、ベッドに横たわる長男寿也(じゅんや)さん(12)に寄り添っていた。

 寿也さんは生後まもなく脳や心臓の欠損が見つかり、大きな手術や命の危機を幾度も乗り越えた。今は自力で動くことも食べることもできず、人工呼吸器、中心静脈に直接栄養を補給する管などを着けている。1日20~30回のたんの吸引、体位の変え、医療器具の交換も智見さんが担う。

 平日は訪問看護師が毎日、訪問教育の教諭が週3日訪れ、週2日は訪問リハビリも受けている。それでも「本人が楽しく過ごせて、親も安心して預けられる場所が欲しい」。智見さんは切に願う。

 そんな願いをかなえるとされるのが子どもホスピスだ。1982年に英国で誕生し、欧米には広く普及。日本では2012年に大阪で創設、16年に東京、大阪に相次いでオープンした。現在、福岡、横浜、北海道で開設を目指す動きがある。

 「ホスピス」というと終末期の緩和ケアを施す病棟がイメージされるが、子どもホスピスはみとりだけの場ではない。子どもの症状緩和▽子どもが発達に応じて多様な経験や活動ができる環境▽看護・介護する家族の休息のための短期入所▽きょうだい児のケア▽死別後の心のケアーなど、提供されるサービスは幅広い。

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 福岡では、九州大の濱田裕子准教授(小児看護学)が代表理事を務めるNPO法人「福岡子どもホスピスプロジェクト」が10年から、理解と寄付を呼び掛けてきた。

 10月下旬、同プロジェクトなどが子どもホスピスを支える人材養成セミナーを九大で開いた。「患者から子どもに戻る時間を保障する」「どんな状況でも子どもの成長発達を支える」「家族で楽しい時間を過ごし、思い出作りができる場所は必要」…。専門家が語る役割と存在意義に、看護師や保育士ら約100人が耳を傾けた。

 ただ、現行制度に当てはまらない施設のため、運営は寄付に頼るなど、開設への道は険しい。今年から、入院中の病児に付き添う家族が安価に寝泊まりできる施設「ファミリーハウス」との併設を模索し始めた。病院でも家でもない「第2のわが家」を目指す思いが一致。建設資金はめどが立ちつつあり、土地を探している段階という。

 九大病院周辺などで2施設4室を運営する「福岡ファミリーハウス」の高原登代子代表(58)は、九州各地から重い病と闘う子どもと家族が集まる福岡での必要性を痛感している。自身も小児がんの長男に付き添って神奈川県で過ごした経験がある。「社会で一番弱い存在である病気の子どもたちを支えるのは、私たちの役割ではないかと思う」

 医療が高度化した日本で、1歳までに亡くなる子どもは千人に1・9人(18年)。半面、寿也さんのような医療的なケアが必要な子は増え続け、1万8千人を超える。「本人もきょうだいも親もまるごと支え、子どもらしい成長を促せる場を社会全体でつくっていきたい」。濱田さんの訴えは重みを増している。

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 福岡子どもホスピスプロジェクトは寄付や支援を募っている。電話=092(409)3474▽メール=toiawase@kodomo-hospice.com

 (編集委員・井上真由美)

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