学校のエレベーター設置、対応に差 「共生教育」広がるも…費用が壁に

西日本新聞 一面 四宮 淳平

 子どもの障害の有無にかかわらず、地域の学校で共に学ぶ「インクルーシブ(共生)教育」が広がる中、エレベーターの設置に関する自治体の判断が割れている。階段の昇降が不自由な子どもの家庭からの要望に応じる自治体もあれば、数千万円の設置費に二の足を踏むケースも。共生教育を進める上での悩ましい“壁”として浮上している。

 福岡県太宰府市の水城小。生まれつき足が不自由で車いすで移動する1年の養父丈一郎君(7)は、ほとんどの時間を通常学級で過ごす。体育で幅跳びをする時は、近くでマット運動に取り組むなど教員が工夫。級友も自然と受け入れ、学級の雰囲気は温かい。

 地元校への入学を後押ししたのは、事前に学校見学した際の教員の一言だった。「どうぞうちに来てください」。幼稚園や保育園の入園を断られていた母亜樹さん(36)は「救われた気がした」。父隆志さん(37)と相談し、同級生からたくさんの刺激を受け、地域で成長してほしいと考え、決断した。

 そこで丈一郎君の障壁となっているのが、階段の昇降だ。2階の図書室への移動などには市が配置した支援員らが対応しているが、同校では通常2年生の教室は2階。現状のままでは丈一郎君の学級は、学年が上がっても1階に固定される可能性がある。両親は「自分のせいで、と思わせたくない」と、エレベーター設置を求める約3500人分の署名と要望書を市教育委員会へ提出した。

 エレベーター設置について、市教委は「バリアフリーの重要性は理解している。全学校の整備構想を策定中のため現時点では判断できないが、水城小が改修対象になればその時に検討したい」と説明する。

 文部科学省によると、地域の公立小中学校で特別支援学級のうち肢体不自由児の在籍学級数は2008年度の2485から、18年度は3107に増加。希望して通常学級に在籍する子もいる。16年に障害者差別解消法が施行され、一緒に学ぶ上での障害を取り除く「合理的配慮」が行政機関に義務付けられた。

 幼少期から健常者と障害者が共に過ごせば、偏見が和らぐと同時に、障害のある子が社会で生きる上での訓練にもなる。一方、エレベーター設置がかなわない場合、障害がある子の所属学級が1階に固定され、級友や保護者が不満を抱える懸念もある。

 千葉市は基本的に要望に応じて整備しており、市立の小中高168校のうち4割に設置済み。担当者は「学校生活向上のため、できる対応はしていきたい」。一方、静岡県湖西市でも要望はあるが、市教委は「財政面や優先順位からも、校舎の建て替えがない中では難しい」との立場だ。岡山市ではストレッチャーに乗る小学4年、大森泰地君(10)の家族などから要望が出されて来夏の設置が決まったが、市教委は「要望への対応ではなく、設置校の地理的なバランスを考えた結果」と強調する。 (四宮淳平)

■ニーズ調査し設置を

 川島聡・岡山理科大准教授(障害法)の話 障害者差別解消法は、今エレベーターを必要としている子どもへの合理的配慮だけでなく、今後の入学生など不特定多数の利用を想定した「事前的改善措置」も求めている。公的機関のユニバーサルデザインを進めるのは当然であり、行政はニーズを調査した上で計画的にエレベーターを設置していく必要がある。

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