東京で板前修業中の青年サブが、古里の老いゆく母を思う…

西日本新聞 オピニオン面

 東京で板前修業中の青年サブが、古里の老いゆく母を思う。「前略おふくろ様。おれはあなたの青春を知りません。ピチピチと若く、可愛(かわい)く、恋をした、そうしたあなたの青春をオレは(略)」。ドラマで萩原健一さんがサブを熱演

▼サブが勤める料亭のおかみ役は八千草薫さん。数十年前、夫の腹痛をがんと疑い「ケーキ断ち」で願を懸けた。されど。「カステラはケーキには入らない感じでしょう」「ババロア。あれ違いますよね」と次々対象外に。私生活も愛らしく

▼サブが慕う先輩の板長に梅宮辰夫さん。役作りのため本職に師事し、包丁さばきはいつしか玄人はだし。寡黙な職人が似合ったが、テレビの食の番組では仁義なき豪快な食べっぷり

▼今年亡くなった方々の思い出をつづっている。男たちへきつい一撃をつづったのは作家田辺聖子さん。「男は女に、自分の母親風であることを要求するので、愛について議論する必要など夢にも思わない」

▼国連難民高等弁務官の緒方貞子さん。「生きていさえすれば、彼ら(難民)には次のチャンスが与えられる」。信念と、危険も顧みない行動の人であった

▼「とにかく生きて」の理念は、ペシャワール会の中村哲さんとも重なる。農地回復が平和への道筋、と一身を捧(ささ)げた人への理不尽すぎる銃弾。対面した妻尚子さんが掛けた言葉は「頑張ったね」。千万の語でも言い尽くせぬ思いが、この5文字に。

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