釜山(韓国) 鮮烈な光彩、デジタル美に酔う

西日本新聞 夕刊 郷 達也

 気軽にさっと海外へ。韓国第2の都市・釜山は、そんな思いで旅先に選ぶ人も多いことだろう。最新のデジタルアートや海辺の文化村、クルーズ体験…。成長を続ける港湾都市の新たな一面に出合えた。

 まず向かったのは釜山北東部にある海辺の町、機張(キジャン)にある海東龍宮寺(へドンヨングンサ)。周囲は名物のワカメなど海産物の露店が軒を連ね、十二支の石造の神像がずらりと並んでいた。「日本とは一つ違うのがありますよ」。ガイドの金美廷(キムミチョン)さんに言われ、目を凝らすと、確かにイノシシが豚ではないか。クスリとさせられた。

 階段を下りると海が開け、断崖絶壁に鎮座しているのが海東龍宮寺だ。韓国三大観音聖地の一つといい、緑を基調とした装飾で趣がある。韓国流の三拝で家族の健康を祈願した。

 次は影島(ヨンド)地区へ。釜山の観光地と言えば甘川(カムチョン)文化村が有名だが、ここ数年、人気が出ているのが同地区のヒンヨウル文化村。海沿いの細い路地に空き家などを活用したカフェやアート作品が並び、散策にぴったりだ。

 リゾート地、海雲台(ヘウンデ)地区ではヨットでクルーズ体験をした。2005年に首脳会議が開かれた「ヌリマルAPECハウス」や洗練されたデザインの高層マンション群、市内中心部と同地区を結ぶ全長約7・4キロの広安大橋を大海原から一望できる。同行の女性たちは船首に立ち、映画「タイタニック」の有名シーンをまねして盛り上がっていた。真っ赤な夕日も美しい。

 同地区の副都心・センタムシティでは「ミュージアム ダ」を訪問。8月に開館したメディア美術館で、国内最大規模のデジタルアート展を開催中だ。入り口すぐにメークルームがあり、入館者が自由に化粧直しができる。デジタルアート作品の中で自身を、よりきれいに撮ってほしいとの美術館の粋な計らいだ。

 メインフロアへ入り、度肝を抜かれた。8千万球のLED(発光ダイオード)が縦横無尽に鮮烈な色彩を放っていた。正面の巨大モニターを中心に、地球やチョウ、キャラクターなどを題材にした9本の映像プログラムが絶え間なく流れる。「光のショー」は、異世界にいるかのようだった。

 同館ガイドの李敏智(イミンジ)さんによると、美術や建築、ファッション、音楽などさまざまな分野のアーティスト16人が制作。リビングや寝室、浴槽といった身近にある物もきらびやかに装飾されていた。若い女性の来館が多く、写真は撮り放題のため会員制交流サイト(SNS)の「インスタ映え」には抜群だ。李さんは「ただ眺めるだけで癒やされる。そんな時間を過ごしてもらえれば」と笑顔で語った。

 日韓関係は過去最悪レベルの冷え込みだ。だが釜山を旅して実感したのは、民間レベルではそうした冷たい風は、微風すらも吹いていないということ。「政治は置いといて民間レベルの交流は絶やしてはいけない」。そう話す釜山広域市観光協会の鄭光洙(チョンガンス)事務局長と固い握手を交わした。距離も心も近い隣国が、そこにあった。 (郷達也)

 ●メモ

 福岡空港から釜山・金海国際空港への直行便は、50分程度。「ミュージアム ダ」は、釜山都市鉄道(地下鉄)2号線のセンタムシティ駅から徒歩数分。周辺は、世界最大規模のデパート「新世界センタムシティ」や、釜山国際映画祭の拠点施設「映画の殿堂」などもある。

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ